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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

お年寄りはなぜ身長が低いのか

現在4人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えている日本ですが、街で見かける高齢者は大抵の場合若い世代の人よりも背が低いです。

なぜおじいちゃんとおばあちゃんは背が低いのでしょうか。

 

 

歳を取ると背が縮む

多くの人が聞いたことのある話は、歳を取ると背が縮むというものです。

これは実際に起こることで、ヒザの関節軟骨がすり減ったり、骨が細くなる(長さも短くなる)、筋肉が衰えるといった原因により、40歳を過ぎた頃から人は10年に1cmほどのペースで身長が縮んでいきます。

つまり80歳になる頃には40歳の時よりも、4から5cmほど背が低くなってしまうというわけです。

膝

 

 

しかしここで疑問に思うのは、街で見かけるおじいちゃんやおばあちゃんは周りより4cmどころではなくもっと背が低いではないかということです。

 

 

 

本来伸びるはずだった身長に達していない

お年寄りの背が低いもう一つの理由が、そもそも若い頃に本来伸びるはずだった身長にまで背が伸びなかったということが挙げられます。

 

例えば、現代では食べ物が多すぎて食べ過ぎによる肥満や食べ残して捨てる量が膨大であるといったことが社会問題となっていますが、歴史的にはつい最近まで食べ物は足りないことの方が普通でした。身長が伸びる成長期に食料が足りないということが普通だったため、十分な栄養を摂取できずに身長の伸びが抑えられてしまったのです。

他には、幼少期に病気にかかることが現代よりもはるかに多かったことも挙げられます。現代なら簡単に治る病気でも長く患ってその間栄養の摂取が十分に行えないということも珍しくなかったのです。

また、医学的に子供の成長に必要な栄養素についても現代ほど研究が進んでいませんでした。そのため、どんな栄養素を摂取するのが子供の成長にとって理想的なのかわかっていなかったのです。現代のようにお母さんのお腹の中にいるときからサプリメントで不足しがちな栄養を補うなどということは出来なかったのです。

 

こうした複合的な要因により、おじいちゃんとおばあちゃんの世代は、本来伸びるはずだった身長のポテンシャルを発揮できずに成長期を終えたのです。

子供お年寄り

 

背の低いおじいちゃんおばあちゃんは消える

では、上で述べたような問題を抱えていない現代人はどうでしょうか。

どうやら一部の国では人々の身長はポテンシャルの限界に達したようです。

近年食料問題が解決して医療や栄養学が発達するとともに、人々の平均身長はどんどん伸びました。例えばNCD Risk Factor Collaborationの調査によると世界で最も平均身長が伸びたのは韓国人の女性で、なんと1896年から1996年の100年で平均身長が20.2cmも伸びているのです。

しかし、このまま身長が2m, 3mと伸びていくわけではなくポテンシャルをフルに発揮できるようになって以降の世代の人たちはもはや背が伸びなくなりました。日本人で言えば、1960年代前半以降に生まれた人から後の世代はほとんど平均身長が変わっていません。

同じことが世界の先進国で確認されており、医療にしろ栄養にしろ身長の伸びを邪魔する要素は現代ではほとんど解決したのです。

 

つまり日本を含めて人々の平均身長の伸びが止まったような国では、近いうちに背の高いおじいちゃんとおばあちゃんを街でたくさん見かけるようになる日がやって来るのです。

 

 

 

 

Reference;

MinuteEarth:https://youtu.be/VQTyRVBkeIw

eLIFE:https://elifesciences.org/articles/13410

 

自動運転で最も遅れるテスラと進んでいる意外な企業

テクノロジーの世界で今一番多く語られる話題の一つが自動運転でしょう。

自動車メーカーだけでなくIT企業も参戦していることから技術開発競争が激化している分野です。

中でもアメリカの電気自動車ベンチャーのテスラは、「オートパイロット」と呼ばれるドライバーアシスタント機能をすでにリリースしており、高速道路など一定の条件下ではほぼ車が自分で安全を保ちながら走行を続けることが可能になっています。今、自動運転の領域で最も進んでいる企業の一つとして捉えられることが多いでしょう。

すテスラモデルS

テスラ モデルS By Andrzej Otrębski (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

 

ところが、アメリカの技術調査会社であるナビガントリサーチ(Navigant Research)が2018年1月に発表したレポートによると、対象となった自動運転技術を開発している企業19社のうち意外なことにテスラは最下位にランキングされています。

 

レポートによれば、テスラのイーロン・マスクCEOが派手な発表を繰り返していくら世間の気を引こうとも技術的には疑わしい水準であるとされています。また資金面や製造品質に問題があることも評価を下げた原因でした。

前述の「オートパイロット」も自動運転のレベル2と言われる水準の技術で2015年の登場以来目立った進歩は見せていません。

 

 

逆にレポートで1位となったのはリーマンショック後の破産から復活したアメリカのゼネラルモーターズ(GM)です。

GMは、同社の電気自動車であるシボレーBolt EVをベースにハンドルもアクセルもブレーキペダルもない車を完全自動運転車として2019年に投入することを発表しています。

また、ライドシェアのリフト(Lyft)への出資に自動運転ベンチャーのクルーズオートメーション(Cruise Automation)の買収やメイヴン(Maven)というカーシェアリング事業を立ち上げており、会社として他社をリードするだけの知識・ノウハウを持ち合わせている点が高評価の理由でした。

もちろん、世界最大級の自動車会社として自動運転技術に巨額の投資ができるだけの収入もあります。

シボレーボルト

GMの自動運転車 By Dllu (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

そしてここで気になるのは日本企業です。

同レポートでは1位のGMの他に、2位はグーグルの自動運転プロジェクトが独立したWaymo、3位がメルセデス・ベンツブランドを抱えるダイムラー社と世界最大の自動車部品会社ボッシュ社の連合、そして4位フォードが先頭集団とされており、この中に日本企業はありません。

このランキングでは、ルノー日産アライアンスが8位、トヨタが12位、ホンダが16位とアメリカやドイツ勢に対して日本勢の出遅れが明らかになっています。

 

日本企業の遅れの最大の原因は、上位陣が自動運転という技術で何を目指しているのかを調べると見えてきます。

GMは前述の通り、ライドシェアやカーシェアなど自動車を造って儲ける以外の事業に目を向けています。ウェイモもグーグル時代から自動運転のベース車両はレクサスを使っており、開発していたのはあくまで車というハードではなく自動運転の技術そのものでした。今もクライスラーのバンをベースに自動運転車を開発しており、車を作って売るのではなく移動を消費者に提供することが目標になっています。3位のダイムラーも同様で、既に同社のカーシェアサービスであるCar2Goは世界最大の規模にまで成長しており、ユーザー同士が直接車を貸し借りするピアトゥピアシェアリングも開始予定です。

つまり、従来自動車産業を支配していたのはカーメーカー(車を創る会社)だったわけですが、それが今後はモビリティープロバイダー(移動を提供する会社)に変わろうとしている様子が見て取れるのです。

ウェイモ

クライスラーパシフィカを改造したウェイモの自動運転車 By Dllu (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

 自動運転技術とは、車のハンドルやアクセル操作が自動になるという話では終わりません。実際には車の使い方や人々が移動する方法そのものが根本的に変わり、自動車業界の勢力図も塗り替えられようとしています。

スマートフォンのアップル、インターネット検索のグーグル、ネットショッピングのアマゾンのような黒船が日本のマーケットに参入した後の日本企業は苦戦しています。まだ決着がつく前に日本からも欧米に対抗できるモビリティープロバイダーが現れることを願うばかりです。

 

 

 

 

Reference;

Navigant Reserch:https://www.navigantresearch.com/research/navigant-research-leaderboard-automated-driving-vehicles

Car and Driver:https://blog.caranddriver.com/analysis-theres-a-new-leader-in-the-race-to-develop-self-driving-systems/

 

日本からハワイまで3時間の速さ コンコルドの引退と超音速旅客機の復活

以前当ブログで紹介したように、ジェット旅客機の巡行スピードは実は50年前から全く速くなっていないため海外旅行のフライト時間は一向に短くなりません。しかしこれには例外がありました。

1976年から2003年までブリティッシュエアウェイズとエールフランスによって運行されていたコンコルドは、音速の2倍の速さで飛行していました。つまり今のジェット旅客機の半分の時間で目的地まで行けたのです。成田空港からハワイのホノルル空港までたった3時間で行ける飛行機があったということです。

なぜ超音速旅客機は空から消えたのでしょうか。

 

 

 

コンコルドの開発

1960年代から70年代は宇宙開発競争と同じく、航空機の世界でもアメリカ、ソ連、イギリス、フランスによって音速よりも速く飛べる旅客機の開発競争が行われていました。この中で最も成功したのが、イギリスとフランスによって共同開発された超音速旅客機コンコルドです。アメリカは途中で開発を断念し、ソ連は独自の超音速旅客機をたった55回の定期運行で終了させたため、実質的には世界で唯一の超音速旅客機でした。

コンコルド

コンコルド By Richard Vandervord [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

イギリスのBAC(British Aircraft Corporation)とフランスのエアロスパシアル(Aerospatiale)は、 両国で超音速旅客機の開発を競うのではなく協力するという決定のもと、1962年に共同開発をスタートさせます。航空機の名前は英語とフランス語の双方で「調和」を意味するコンコルド(Concorde)になりました。

 こうして英仏の協力で開発されたコンコルドは1969年のパリエアショーでデビューし、世界中の航空会社から74機を受注します。

開発当事国であるイギリスのブリティッシュエアウェイズとフランスのエールフランスの他にもアメリカからパンナムとユナイテッドがそれぞれ最多の6機をオーダー。その他にはカンタス、エアカナダ、ルフトハンザなども含まれていました。実は日本航空もこの時に3機をオーダーしています。

ところが、1973年のパリエアショーでコンコルドのライバルであるソ連の超音速旅客機トゥポレフ Tu-144がデモンストレーション飛行中に墜落するという大惨事を起こしてしまい、世界中で超音速旅客機に対するイメージが悪化します。

Tu-144

ソ連のTu-144

 

また、オイルショックにより燃料費の高騰が懸念されたことやソニックブームと呼ばれる超音速機特有の轟音により海の上空でしか超音速飛行が許されなくなるなどコンコルドにとっては不利なことが次々と起こった上、機体の価格が当初よりも上昇したため受注キャンセルが殺到します。最終的にコンコルドは6機の開発用プロトタイプと14機の商業利用機という合計20機が製造されただけになってしまいました。

それぞれ7機を導入した唯一の購入者であるブリティッシュエアウェイズとエールフランスさえも購入に前向きではなかったものの、超音速旅客機の開発は国家プロジェクトであったためにイギリスとフランス両政府の意向により購入せざるを得ませんでした。

しかしこうした理由により、例えばブリティッシュエアウェイズはコンコルドを1機あたり1ポンドで購入。実質的にコンコルドの費用は税金でイギリス政府により肩代わりされていました。

コンコルドは利益が出なかったという話はよく聞きますが、少なくとも当時1機あたり5500万ポンドする機体をブリティッシュエアウェイズは実質タダで手に入れていたので、その点では決して悪い商売ではなかったはずです。実際コンコルドのチケットは同ルートを飛ぶ最安のチケットより30倍も高額で、ピーク時にはブリティッシュエアウェイズの利益の20%が、たった7機のコンコルドからもたらされていました。

 

コンコルド

コンコルド By Ralf Manteufel (http://www.abpic.co.uk/photo/1146802/) [GFDL 1.2 (http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html)], via Wikimedia Commons

 

 

コンコルドの機体

一目で気がつくコンコルドの外見上の特徴はデルタウイングと呼ばれる三角形の翼でしょう。

コンピュータシミュレーションが無い時代に模型で風洞試験を繰り返した結果、超音速で飛行するにはギリシャ文字のデルタのような翼の形状が有利であることが分かっていました。この翼の形状はコンコルド以前の超音速軍用機であるロッキード社のスターファイターなどで既に採用されていたものです。

しかし、この翼の形状では着陸時には機体を斜めにして揚力を稼ぐ必要があるため、斜めの状態でコックピットから滑走路が見えるようにコンコルドの先端は可動式になっており、これももう一つの特徴になっています。

コンコルド

コンコルドの可動式ノーズ By Eduard Marmet [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0), CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

エンジンはロールスロイス製のオリンパスと呼ばれるターボジェットエンジンを4つ搭載しており、離陸時と飛行後の加速時に20%推力を上げることができました。

この強力なエンジンは地上で推力を最も落とした状態でもコンコルドを前に進めてしまうほどのパワーだったため、常に車輪にブレーキをかけてコントロールする必要がありました。そのためコンコルドの車輪にはブレーキ冷却用のファンが付いていたほどです。

また、超音速飛行中でもエンジン内に入ってくる空気の速さを音速以下に落とせるようにエンジンのダクト前面は可動式になっていました。

使う燃料の量も桁違いで、2トンの燃料が滑走路に行くまでに使われ、燃料タンクの半分は離陸してから最高速のマッハ2に到達するまでになくなってしまいます。

また、超音速飛行時には機体の後ろ側に揚力の中心がずれてしまいそのままでは機体が前のめりになってしまうため、一部の燃料は機体後部のタンクに移してバランスを取るために使われました。

コンコルド

特徴的なデルタウイングとオリンパスエンジン By Mike Freer - Touchdown-aviation [GFDL 1.2 (http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html)], via Wikimedia Commons

 

その他にも、コックピットの操縦桿は物理的に油圧システムなどにつながっているわけではなく電子信号として処理されるフライバイワイヤシステムを採用していたり、自動で着陸することができるなど超音速飛行以外の面でも60年代当時としてはかなり先進的な設計でした。

 

 

飛行ルート

最も典型的なコンコルドの運用ルートはヨーロッパからアメリカ東海岸へのルートでした。ブリティッシュエアウェイズであればロンドンのヒースロー空港からニューヨークのJFK空港までのルート。エールフランスの便も同じく典型的な行き先はニューヨークでした。航空機が音速を超える際に発生するソニックブームという轟音が問題となり、多くの国の上空で超音速飛行が許されていなかったのと、先にも触れた燃料の消費量の問題で大西洋は横断できても太平洋を横断することはできなかったのです。

 

ロンドンのヒースロー空港を飛び立ったコンコルドは西に向かい、海上に出るまでは音速以下のスピードで飛行しながら一般的なジェット旅客機のように高度22000フィートまで上昇を続けます。そしてひとたび海上に出ると航空管制はコンコルドの進路上に他の航空機が入らないようにして、超音速まで加速する許可が下りることになります。

この際エンジンはアフターバーナーで20%出力を上げた状態で運転されるため15分という時間制限があるのと超音速に達する前の中途半端な速度域では飛行が不安定になるため超音速への加速は一気に行われる必要があったのです。

そして速度がマッハ1.75、高度が43000フィートに達した時点でエンジンの出力は戻されますが、そのまま勢いに乗ったコンコルドは最終的にマッハ2、高度50000フィートにまで到達します。その後は燃料を使った分だけ機体は軽くなって上昇を続け、一番高いところで59000フィートにまで達します。

 

このようにコンコルドは空気がかなり薄い通常のジェット旅客機の倍にもなる高度を飛行しているとはいえ、最高速に達した際の空気との摩擦で機体表面は摂氏120度を超えるほどの温度まで上昇します。それに対して機体の限界温度は127度だったため、その温度を超えないようにコンコルドのスピードは自動調整される仕組みになっていました。また、この時熱せられたコンコルドの機体は全体で20cmほども伸びるため、客室はローラーの上に乗った構造になっており、機体が伸びても客室には影響がないような工夫がされていました。

コンコルド

コンコルドの客室 Daniel Schwen / Wikimedia Commons [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

 

圧倒的なスピード

コンコルドのマッハ2というスピードは、なんと地球の自転よりも早いスピードです。

それをもっとも体感できたのが、ヒースロー空港18:25発でJFK空港17:00着の便でした。18:25に日没後のロンドンを暗闇の中飛び立ったコンコルドは、全体の2/3ほどの行程を飛行したところで先ほど沈んだ太陽に追いついて周りが明るくなってきます。そして到着したニューヨークで再び日没が訪れるのです。

このように圧倒的な速さだったため、コンコルドのチケットを購入した顧客は超音速ではない別の飛行機に振り替えるわけにもいかず、ブリティッシュエアウェイズもエールフランスもJFK空港に万が一のためにバックアップのコンコルドを待機させていました。 

 

 

運用終了

さて、冒頭で記した通りコンコルドは既に運用が終了して引退しています。

こうして空からは超音速旅客機が消えて、ロンドンからニューヨークへのフライト時間はふたたび倍の長さに戻りました。

なぜ、人類は一度実現した夢の超音速旅客機を手放すことになったのでしょうか。

 

基本的に2003年に引退したコンコルド自体は老朽化が原因です。1960年代から使われた機体をこのままずっと使い続けるのは無理があります。ではなぜ新しい機体を導入して運用を継続しないのかといえば、単純にコンコルドはもう生産されていないからです。そして、14機しか売れなかったコンコルドに続く次世代の超音速旅客機も開発されなかったのです。

最大の問題はやはり音速を超えて飛行する際に発生するソニックブームと呼ばれる轟音でしょう。海上でしか超音速飛行ができないので、例えばアメリカを横断するニューヨークからロサンゼルスへの便といったルートに超音速旅客機は使えません。航空会社からすると非常に使いづらい飛行機です。

だからこそ、NASAが今でも研究しているのはソニックブームの低減方法なのです。

 

 

将来

さて、コンコルドは引退しましたが、将来に向けては日本のJALやイギリスのヴァージングループなどが出資するBoom technologyというベンチャーが超音速旅客機を開発中です。

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1960年代には既に実現されていたわけですから、新しい超音速旅客機を開発することは可能でしょう。しかし問題はいつも、どれだけ普及するかです。14機しか売れなかったコンコルドが消えていったように、どんなに優れた技術も普及しなければ消えゆく運命にあります。

 

ちなみに、JALは既にBoomの超音速旅客機20機を予約しているそうです。

日本からハワイまで3時間で行ける日はやってくるのでしょうか。

 

 

 

さて興味を持った方は、コンコルドが出てくる映画「エアポート’80」もチェックしてみてはいかがでしょうか。 

 

 

 

 

Reference;

Captain Joe:https://youtu.be/JgAvxvDRg6c

Vox:https://youtu.be/a_wuykzfFzE

Wendover Productions:Why Planes Don't Fly Faster - YouTube

 

宅配の救世主 自動運転車Nuro

昨今話題の自動運転というキーワードを聞くと、車にカメラやレーダーが取り付けられており、ドライバーが運転操作をしなくても目的地まで行けるような自動で運転されるクルマをイメージすると思います。

ところが元グーグルのエンジニアであるDave FergusonとJiajun Zhuの二人が始めたNuro(ニューロ)というベンチャーは、少し違う自動運転車を開発しているようです。

youtu.be

 

動画に写っているR1と名付けられた試作車には人が乗るスペースはなく、もちろんハンドルもアクセルもブレーキもありません。以前グーグルが試験していたハンドルもアクセルもない完全自動運転車を、荷物を運ぶための専用設計にしたようなデザインです。特にNuroがターゲットにしているのが、荷物の配送でも最後の集配所から配達先までのいわゆるラストワンマイルでの使用だそうです。

基本的にR1は荷物を積んだ状態で無人で自動走行をして目的地に着いたら、あとはアプリで受取人に通知が届き荷物を受け取れる仕組みを考えているようです。似たような仕組みの実験は、日本でもヤマト運輸とDeNAがロボネコヤマトの名称で行っています。

 

自動運転車

グーグルが試験していた完全自動運転車 By Grendelkhan (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

 

eコマース(ネットショッピング)の急増に対して、アマゾンはドローンを使った配送を計画していると伝えられていますし、日本でも人手不足によりヤマトが値上げに踏み切ったりとラストワンマイルの配送は荷物の急増に対して限界を迎えつつあるように見えます。

今世界中で自動車メーカーやIT企業が開発競争を繰り広げているロボットタクシーやトラックの自動走行ももちろん重要ですが、NuroのR1のような自動配送車が実現すれば、ロボネコヤマトのようなコンセプトで、無人で宅配便が届けられるのが当たり前になる日がやってくるのかもしれません。

youtu.be

 

 

 

 

Reference:

Nuro:https://nuro.ai

The verge:https://www.theverge.com/2018/1/30/16936548/nuro-self-driving-delivery-last-mile-google

木には寿命がないのか 世界一長寿の木

長寿の象徴といえば鶴は千年亀は万年と言われるように、日本では鶴と亀でしょう。

しかし、実際は鶴も亀もせいぜい30年程度の寿命で、人間の平均寿命よりも短いのです。最も長寿のゾウガメで200年近く生きたという記録があるものの、1000年には程遠い寿命です。

ところが、我々の身の回りには千年生きることができる生命体がいます。木です。

 

では、木で長寿なものはどの程度の年齢(樹齢)なのでしょうか。

 

 

世界最大の木

長生きしていそうだと簡単に想像がつくのは大きい木でしょう。木が大きくなるのには時間がかかりますから、世界一大きい木が世界一古い木の可能性があるような気がします。

 

世界最大の木は、アメリカのカリフォルニア州にあるジャイアントセコイヤです。

セコイヤ国立公園内でジェネラル・シャーマン(General Sherman:シャーマン将軍)と名付けられたこの木は、高さが80メートルを超えており重さは1000トンあると推定されています。ちょっとしたビル並みの大きさです。

この木で樹齢が2300年程度と言われていますので、ゾウガメの寿命を簡単に超えて千年以上生きている生命体ということになります。

General Sherman

世界最大の木ジェネラル・シャーマン Aaron Zhu [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

 

世界最古の木

そして世界には最大の木であるジェネラル・シャーマンよりもさらに長寿な木が存在します。

 

スウェーデンにあるOld Tjikkoと名付けられたオウシュウトウヒの木は、なんと9500年以上前から生きているとされます。しかし、地上に見えている木は比較的若く推定600歳以下で、根の方が9500年生きているといいます。

Old Tjikko

スウェーデンのOld Tjikko By Karl Brodowsky (Own work) [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

 

根ではなくて地上に見えている木として樹齢が確認できている中で最古のものは、カリフォルニア州ホワイトマウンテンにあるブリストルコーン・パインの木です。

こちらはなんと樹齢5000年。

ホワイトマウンテンは寒く降水量も少ないため植物には厳しい環境です。しかしそれがかえって、他の植物がいないブリストルコーン・パインの楽園を作ったのです。周囲の栄養を独占できる上に、山火事の可能性も少なくなります。実際ホワイトマウンテンでは植物にとってより環境が厳しい高い標高の場所ほど古い木が多いのだそうです。

5000年前にはまだエジプトのピラミッドも完成していません。その時代からずっとそこにいるのですから驚異的です。

Bristlecone Pine

ホワイトマウンテンのブリストルコーン・パイン By Rick Goldwaser from Flagstaff, AZ, USA (Gnarly Uploaded by Hike395) [CC BY 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

 

 

さらに高齢な木は、アメリカのユタ州にあるフィッシュレイク国立森林公園でパンド(Pando)と名付けられた森です。

ここに生えている47000本のポプラの木は、根の部分で繋がっており全て遺伝子的に同一なのです。つまり、この森全体が一つの生命体なのです。森全体の重さは8千トンにもなり、世界で最も重い生命体だそうです。

この森に生えている木の1本1本は200歳以下ですが根の部分はずっと生き続けており、生命体としての年齢は少なくとも8万年は超えているとされます。

8万年も前になると、地球にはネアンデルタール人など我々ホモサピエンス以外の人類もまだいた時代ですから、気が遠くなるような長寿です。

Pando

フィッシュレイクの森にあるポプラの木

 

 

 

木の寿命

ところで、これほど長く生きられる木はもしかして永遠の命があるのでしょうか。

 

そもそも木は、人間や鶴や亀とは構造が全く異なっています。脳や心臓のように生命を維持するのに必要なある機能を体の特定の場所がになっているわけではありません。木は落雷などで一部分が死んでも残りの部分だけで生き続けることが出来るのです。さらに、木は万能細胞を持っているため必要な機能を後から足すことができます。葉っぱが必要になれば、必要な場所に新しい葉を作り出せるのです。

そのため、パンドの森のように一部が次々に死んでは新しい幹がまた生えて結果的に一つの個体が8万年も生き続けるという事が可能です。

 

では木が死ぬ原因はどんなものでしょうか。

基本的には外部要因ということになります。土壌や気候が変わったり、山火事に落雷や病気に感染するなどの突発的な出来事が原因です。そのため学者の中には、木は理想的な環境にいれば永遠に生きられると考える人もいます。

 

 

さて、ここで紹介した木は、樹齢が確認できているものだけです。日本の屋久島にある縄文杉のように保存を目的に正確な樹齢を調査していない木もありますし、単純にまだ見つかっていない長寿の木が世界のどこかにあるかもしれません。

木の生命力には驚かされるばかりです。

 

 

 

 

Reference;

The good stuff:https://youtu.be/ikLqudpQWUU

SciShow:https://youtu.be/2Zf6LE0HcFo

飛行機の窓はなぜ丸いのか

飛行機で人気の座席といえば外が見える窓側でしょう。そして、窓側席に座ると気がつくのは窓が丸いということです。まん丸でないにしても、四隅が滑らかな楕円形をしています。

実はジェット旅客機が登場する以前のプロペラ機では、窓は四角くだったのです。

例えば、当時の代表的なプロペラ旅客機であるダグラス社のDC-3を見てみると、客席の窓が四角いのがわかります。

ダグラスDC3

ダグラス DC-3 By Bill Larkins (DC-3 flight on one engine) [CC BY-SA 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)], via Wikimedia Commons

 

 

なぜ四角くかった窓が丸くなったのか。結論から言えば四角い窓には問題があったのです。

 

 

ジェット旅客機の登場

第二次世界大戦が終わり軍用機の需要が激減すると、航空機メーカーはこぞって民間機の製造を始めました。しかし、大戦の戦場になったヨーロッパが工場から作り直さなければならなかったのに対して、アメリカには大戦中に使われた航空機のフル生産体制が既に整っていました。そのためピーク時には世界の航空機輸送の90%がアメリカのダグラスDC-3によって占められるに至ったのです。

これに対して大国としての威厳を取り戻したいイギリスは、テクノロジーでアメリカを圧倒する事を目指して新世代の航空機を開発します。それが以前当ブログでも紹介した世界初のジェットエンジンを使った旅客機であるデハビラント社のコメットでした。

デハビラントコメット

世界初のジェット旅客機コメット

 

流線型の胴体に4つのジェットエンジンが埋め込まれた翼を持つ機体は、21世紀の現在これが新型飛行機だと言われても違和感が無い先進的なデザインです。それが1949年に登場したのですから、その衝撃は計り知れません。直ぐに世界最大の航空会社だったアメリカのパンナム(パンアメリカン航空)が購入を決めるなど、イギリスは再びアメリカを引き離してテクノロジーで世界のリーダーに返り咲いたかに思われました。

しかし、問題が発生します。

1953年5月2日、カルカッタ発のコメットが墜落。たった8か月後の1954年1月10日にはローマ発の便も墜落します。さらに3か月後の1954年4月8日に地中海でも墜落事故が発生。コメットは運行停止となり、徹底した原因調査が行われました。

 

 

四角い窓の問題点

コメットのどこに問題があったのでしょうか。

プロペラ機の時代には、せいぜい山よりも少し高い程度の高さを飛んでいました。これ以上高く飛ぼうにも中の人が耐えられません。

対するジェット旅客機のコメットは、高度1万3千メートルを飛んでいたのです。ジェットエンジンはプロペラ機と同じ高度では燃費が悪すぎたため、空気抵抗の少ないより高い高度を飛行する事でこの問題を解決したのです。しかし、この高度では乗客が耐えられないので、与圧といって客室の気圧を調整してやる必要が出てきたのです。 ところがこれには当時誰も気が付いていない隠れた問題点がありました。

Real Engineeringで、わかりやすい説明がされています。

youtu.be

 

客室内と飛行機の外で気圧を変えるという事は飛行機が離陸して空へ舞い上がった後着陸する過程で、機体は微妙に膨らんだり縮んだりするのです。それ自体は想定されていたのですが、四角い窓の四隅にその応力が集中している事は見過ごされていました。飛行機が離陸と着陸を繰り返すたびに、四角い窓の四隅に集中した応力は時間をかけて金属疲労を起こして最後には飛行中の機体を破壊するにまで至ったのです。

解決策はもちろん窓の四隅に応力が集中しないようにする事。こうして飛行機の窓は丸くなったのです。

 

ジェット旅客機のその後

こうして四角い窓の問題点が見つかるとコメットは改良されて窓は丸くなり墜落事故は起こらなくなりました。しかし事故の原因調査と窓の改良による数年間に及ぶブランクの間にアメリカからもジェット旅客機が登場しました。1957年のボーイング707と1958年のダグラスDC-8です。

ボーイング707
ボーイング707 
Piergiuliano Chesi [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

ダグラスDC8

ダグラスDC-8 By Jon Proctor [GFDL 1.2 (http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html) or GFDL 1.2 (http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html)], via Wikimedia Commons

 

後から登場した両機は性能面でコメットを凌駕しており、アメリカ側が商業的に成功したことは明らかでした。ボーイング707が1011機。ダグラスDC-8が556機製造されたのに対して、改良されたコメット4と呼ばれる機種は76機しか製造されていません。

しかし、コメットの後を追ったボーイングとダグラスの両社が先の事故から学んでいたことは明らかで、 コメットが存在しなければボーイングかダグラスが同じ間違いを犯していた可能性もあります。

リスクをとって新テクノロジーにチャレンジする人々は常に賞賛されるべきですが、チャレンジャーが必ずしも成功者になるとは限らないのもまた事実です。

 

こうしてジェット旅客機を実現させたイギリスは、商業面での旨味はアメリカに持って行かれてしまったのでした。

 

 

 

 

 

Reference;

Mustard:https://youtu.be/v0Cg2ZeYa5E

リチウムイオン電池の次はどんな次世代電池になるのか

現代の生活に欠かせない存在となったスマートフォンや日本の主要産業である自動車業界に押し寄せるEV化の波。さらにはドローンやスマートウォッチなど現在から将来にかけて身の回りのあらゆる物のエネルギー源になるであろう技術がバッテリーです。

しかし電気自動車は航続距離の短さが指摘されていますし、スマートウォッチはほぼ毎日充電する必要があるのが欠点です。これらの問題を解決するには、バッテリーの進化が欠かせません。

 

バッテリーの性能問題はかなり歴史が長く、1914年のニューヨークタイムズの記事で自動車王ヘンリー・フォードは、1年ほどしたら電気自動車の製造を始められるだろうとし、実験車両は製作済みで成功は間違いないが、課題はトーマス・エジソンが取り組んでいる長距離走行に耐える軽いバッテリーの完成だ、と話していたそうです。

結果はご存知の通り、フォードとエジソンが20世紀初頭に取り組んでいた電気自動車のバッテリー問題はその後100年経った今でも完全には解決していません。

 

では将来的にどの程度までバッテリー技術は進化するのでしょうか。

 

 

軽くてたくさん使える電池

今、世界が求めているのは、たくさんの電気エネルギーを小さくて軽いバッテリーから取り出すことですから、重さあたりどれくらいエネルギーを蓄えられるかで性能は判断できます。

この指標で大まかに言えば現状でも1990年代に比べて2倍程度のエネルギーを同じ重さのバッテリーから取り出せるようになっているようです。

 

例えば、21世紀に間に合いましたといって発売されたトヨタの初代プリウスに使われていたニッケル水素電池の重さあたりのエネルギー密度は70[Wh/kg]と言われていましたが、100%バッテリーだけで駆動する電気自動車の先駆け、初代日産リーフに使われたリチウムイオン電池は150[Wh/kg]を超えていました。そしてパナソニックとテスラがアメリカのネバダ州に建設したギガファクトリーと呼ばれる工場で共同生産している最新のリチウムイオン電池は、300[Wh/kg]近くに達しているとも言われています。

 

ではこの進歩はずっと続くのかというともちろん物理的な限界はあります。

現在のリチウムイオン電池の構造であれば、理論限界が500[wh/kg]代後半と考えられるので限界は近づきつつあります。

 

 

未来の電池

限界が近いリチウムイオン電池の次に考えられるのは一体どんなバッテリーなのでしょうか。

まずバッテリーの基本原理ですが、一言で言ってしまえば電子を欲しがっている物質と電子を手放したがっている物質を導線でつないで、両者の間で電子を移動させるという仕組みです。電子の移動とは電流のことですから、これでEVやスマホが動かせます。ですから、次世代電池も電子を欲しがっている物質と手放したがっている物質から良さそうなものを選ぶしかありません。

 

ここで、中学校で習う元素の周期表を見てみましょう。昔の頭の良い人が考えた周期表というものは、元素の性質が似ているものが表にキレイに並ぶように出来ています。次世代電池のヒントもここから見えてきます。

Periodic table

周期表は左上から元素が軽い順番に書かれているので、できるだけ上の方にあるものを使えば軽くできます。そして電子を欲しがっている元素は、表の左側の方に。手放したがっている元素は右の方に書かれています。

ということで左側からは全元素中3番目に軽く金属では最も軽いLi(リチウム)が候補に上がります。また、周期表で一つ下のNa(ナトリウム)も、特性としてはリチウムに負けますが海水から取れるため安く量産化するという意味では注目される物質です。

右側はというと、一番右の列は電子をあげたくもないし欲しくもない安定した元素ですのでそれらを除くとF(フッ素)やO(酸素)が理想的ということになります。

 

では、これらを使うとどの程度バッテリーは進化するのでしょうか。

まずは、周期表上で限界となる端と端にいるLi(リチウム)とF(フッ素)ですが、反応が激しくロケット燃料にも使われる組み合わせで、バッテリーとしての実現性は低いようです。それでも理論的には6000[Wh/kg]というエネルギー密度が可能なようです。

他の組み合わせは、リチウム空気電池(Li-O2)です。Li(リチウム)とO(酸素)という周期表上のほぼ両端にある物質同士で理論的な限界に近い組み合わせです。この組み合わせで理論上は約2700[Wh/kg]程度のエネルギー密度まで高められると言われています。

ここで紹介している理論上のエネルギー密度というものは、調べると情報ソースによってかなり色々な数字が出てきますが、それでもリチウム空気電池が実現すれば現在のリチウムイオン電池より重さが半分で3倍長持ちのバッテリーといったレベルは十分可能性がありそうです。

 

 

  

さて、スマートフォンや電気自動車を実現可能にした革新的な電池であったリチウムイオン電池は、日本のソニーが世界で初めて商業的量産化に成功した技術でした。

リチウム空気電池を最初に量産化するのは誰になるのでしょうか。

 

 

 

 

 

Reference;

Minutes physics:https://youtu.be/AdPqWv-eVIc

Energy & environmental science:https://www.fkit.unizg.hr/_download/repository/Electrical_energy_storage_for_transportation-_lithium-ion_batteries.pdf

 

映画アルマゲドンは現実的なのか。地球に衝突する巨大隕石を止める方法

恐竜絶滅の原因として有力視されているのが巨大隕石の衝突ですが、映画「アルマゲドン」や「ディープインパクト」などでは隕石が地球に衝突して人類が滅亡するという話が描かれています。

実際に、地球に巨大隕石が衝突したらどうなるのでしょう。

バリンジャークレーター

アメリカ合衆国アリゾナ州のバリンジャークレーター

 

 

隕石の衝突事例

1908年、ロシアのツングースカに落ちた隕石は記録に残っているものでは最大の大きさで、隕石の直径は推定60から190メートルもあったと考えられており、そのエネルギーは凄まじく周囲2000平方キロメートルもの広範囲で木をなぎ倒したとされます。この時は、シベリアの奥地で人が全く住んでいないエリアだったため死傷者などの被害は出ていません。

 

1954年、正確な記録が残っている人に対する隕石による最初の被害が起こります。アメリカのアラバマ州に住むアン・ホッジスさんが家で昼寝をしていたところ、家の屋根を突き破って体に3グラムの隕石が衝突し打撲を負ったのです。幸いホッジスさんは怪我を負ったものの無事で、この事故は当時世界中でニュースになったと言います。

 

2013年にはロシアのチェリャビンスクで、歴史上初めて隕石による大規模被害が起こっています。この時の隕石は、地球に衝突する前に燃えながら太陽よりも明るく輝き100キロ離れた場所からでも見えたと言います。サイズは直径20メートル程度と推定されます。被害としては、7000棟の建物の窓ガラスなどの破損と1500人以上のケガ人を出しました。

 

しかし問題は、誰もこの隕石が地球に衝突することを事前に発見できていなかったことです。映画のように、事前に地球に衝突する小惑星を発見して勇敢な宇宙飛行士たちが地球を救うというストーリーは現実にはありえないのでしょうか。

 

 

宇宙を監視する組織

実はNASAには、Planetary Defence Coordination Officeという、意訳すると地球防衛部とでも言いましょうか、地球に接近する小惑星を監視する専門の部署が2016年に開設されています。NASA単独では限界があるので世界中の宇宙関連機関と連携して地球周辺を監視し、もし地球に衝突する可能性のある小惑星が見つかれば地球への衝突を回避するのが役割です。 

仮に隕石の直径が100m以上、つまりサッカーコートほどあれば地球に衝突した際の破壊力は核爆弾級になります。現在このサイズの小惑星が地球の周辺に数千はあるとみられています。NASAは1998年以来こうした小惑星のカタログを作ってそれぞれの軌道を監視しています。現在は、地球が太陽の周りを回る軌道と重なっている小惑星で、直径が1kmを超えるものについて90%以上が監視されており、新しい小惑星が見つかれば軌道を計算して地球に衝突する可能性があるかどうかを判断します。

危険度はトリノスケール(Torino scale)という0から10までの数字で表されます。0は問題なし。反対に最高の10になると、衝突はほぼ確実で地球規模の気候変動により人類の存亡に関わるというものです。

トリノスケール

トリノスケール

 

ちなみにこれまで最高に危険だった小惑星でもトリノスケールで4です。2029年に地球に衝突するとされたこの小惑星も、その後の継続的な監視から地球への衝突の可能性はないことがわかりました。

 

では、地球に衝突することが確実な小惑星が見つかったらそれをどうやって阻止するのでしょうか。

 

 

小惑星の止め方

山ほどの大きさがあり弾丸並みのスピードで地球に向かってくる小惑星を止めるのは現実的ではありません。現実的なのは軌道をそらすことです。

地球は、秒速30キロメートルで太陽の周りを回っています。宇宙のある一点で見ると、地球は7分でその場からいなくなるのです。巨大小惑星の地球への衝突を回避するには、接近を7分遅らせるか早めれば十分ということになります。衝突の十年以上前なら軌道を数センチずらせれば十分衝突を回避できるのです。

 

実際に小惑星の軌道を修正する方法としてすぐに思いつくのは映画でもよく使われる核爆弾です。「アルマゲドン」でも「ディープインパクト」でも人類は核爆弾で小惑星の衝突を阻止しようとします。

他には、宇宙船か人工衛星を当てるということも検討されており、実際にNASAは2005年にディープインパクト計画として地球の軌道と関係のない小惑星で衝突実験を行ったことがあり、有力な方法として検討されていることがわかります。

ディープインパクト計画

ディープインパクト計画で小惑星の軌道が修正された様子

 

 

しかし、小惑星は必ずしも硬い物質でできているとは限りません。衝撃が吸収されてしまうことも考えられます。

 

そこで、映画にはまず登場しないのが次のような方法です。

一つ目は、宇宙船か人工衛星を小惑星の近くで飛行させるというものです。どういう仕組みかというと、質量のあるものが小惑星の近くにあればお互いの引力で軌道が変わるというわけです。この方法で小惑星の軌道を変えるには数年か場合によっては数十年かかるかもしれません。映画で使うには地味すぎる方法です。

Gravity tractor

 

他には、小惑星を白く塗るか黒く塗るという方法も考えられています。白く塗れば太陽の光を反射し、黒く塗れば吸収します。これにより太陽光の力で軌道を修正するというアイデアです。

 

 

さて、派手な方法から地味な方法まで巨大隕石の地球への衝突を回避する方法がいろいろあるのはいいことですが、そもそも衝突した場合に核爆弾級の破壊力を持つ小惑星が実はいつ落ちてくるかわからないというのは何とも恐ろしい気がします。

つい映画の影響でそういった小惑星は衝突前にわかるものだと思いがちですが、まだまだ人類は宇宙に比べればちっぽけな存在であることを思い知らされます。

 

 

 

 

Reference;

The good stuff:https://youtu.be/L6db5cMabbE

Vox:https://youtu.be/EZSCtgfmEO0

世界に似ている国旗が多い理由

オリンピックやワールドカップなど世界的な大会が開かれるたびに、国旗の見分けがつかないと感じることはないでしょうか。とにかくそっくりな国旗が多いのです。

例えば、下にある二つの国旗。どちらがインドネシアでどちらがポーランドか一発でわかる人はかなりの国旗通と言えます。

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インドネシア国旗
 

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ポーランド国旗 

 

ちなみに、モナコ公国の国旗はこれです。

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このように、世界には似たような国旗が溢れています。44ヶ国の国旗は3色の水平模様ベースで、10ヶ国が国旗の左側に1つ星を置いており、赤も青も使っていないのはたったの11ヶ国だけです。

 

では、そっくりな国旗が多いのはなぜか。

そもそも、国旗とはその国を象徴するシンボルです。つまり、似たような国は似たようなシンボルを掲げることになりやすいということが挙げられます。

例としては、ともに共産主義国の中国とベトナムでしょう。

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中国の国旗

 

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ベトナムの国旗 

 

 

中東

共産主義国よりももっと数が多いのはアラブ諸国です。

第一次世界大戦の際にアラブ人の独立と国家樹立を目指したアラブ反乱の際に使われた反乱旗は、そのままアラブ諸国の国旗のモデルとなりました。そしてエジプト、イラク、クウェート、スーダン、シリア、UAE、パレスチナ、イエメン、ソマリア、リビアの10ヶ国が、国として共通のバックグラウンドからよく似た国旗を使っています。

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エジプト国旗

 

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イラク国旗

 

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シリア国旗

 

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パレスチナ国旗

 

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スーダン国旗

 

 

また、中東や北アフリカ周辺で旧オスマン帝国を形成していたトルコやチュニジア、アルジェリア、リビア、アゼルバイジャンなどが、国旗にイスラムのシンボルである三日月をもっています。

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トルコ国旗

 

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チュニジア国旗

 

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アルジェリア国旗

 

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リビア国旗

 

 

大英帝国

共通のバックグラウンドという意味では、イギリスの植民地があります。

旧イギリスの植民地は国旗の左上にイギリスのユニオンジャックがあり、実に23ヶ国が国旗の左上にユニオンジャックを持っています。

例えば、ケイマン諸島が次のような国旗です。

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中でも厄介なのはオーストラリアとニュージーランドで、あまりにも間違えられることが多いため、ニュージーランドでは国旗を変更するかどうかの国民投票が行われたことすらあります。

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オーストラリア国旗

 

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ニュージーランド国旗

 

 

ちなみに、同じくイギリスの植民地だったアメリカの国旗にも以前はやはり左上にユニオンジャックが付いていました。

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アメリカの古い国旗

 

 

 

 

ヨーロッパ

ある国が始めたことを周りの国が真似したという例もあります。

北欧ではデンマークが、最初に十字をベースにした国旗を作りました。すると隣国のスウェーデンが追従し、後を追うようにフィンランド、ノルウェー、アイスランドも十字の国旗を作ったため北欧諸国は十字の国旗だらけとなりました。

 

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デンマーク国旗

 

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スウェーデン国旗

 

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フィンランド国旗

 

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ノルウェー国旗

 

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アイスランド国旗

 

 

大陸ヨーロッパでは、フランス革命で民主主義が誕生した際に有名なトリコロールの国旗も誕生しました。この3色のデザインは自由と民主主義の象徴としてヨーロッパに広がりました。ご存知の通りヨーロッパは縦横3色の国旗で溢れています。

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フランス国旗

 

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イタリア国旗

 

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ベルギー国旗

 

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ドイツ国旗

 

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オランダ国旗

 

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ハンガリー国旗

 

 

アフリカ

同じく理念が広がった例としてアフリカで見られるのが、パンアフリカン主義に基づく国旗です。

アフリカで最後までヨーロッパの植民地支配を受けていなかったエチオピアの国旗をアフリカ独立の象徴として赤・黄・緑をベースとした国旗が多数あります。

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エチオピア国旗

 

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カメルーン国旗

 

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セネガル国旗

 

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ガーナ国旗

 

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コンゴ国旗

 

 

中南米

中南米でも独立運動と国旗は深く関わっています。

まず、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグアの4ヶ国は、かつて中央アメリカ連邦共和国という一つの国だったものがバラバラになったため、もともとの国旗をモデルにして似たようなデザインを共有しています。

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ホンジュラス国旗

 

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グアテマラ国旗

 

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エルサルバドル国旗

 

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ニカラグア国旗

 

 

同じく、南米のコロンビア、エクアドル、ベネズエラは、かつてグランコロンビアという一つの国だったため、やはりそっくりな国旗です。

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コロンビア国旗

 

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エクアドル国旗

 

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ベネズエラ国旗

 

 

 

日本 

さて、最初に紹介したインドネシア、ポーランド、モナコはなぜ国旗が似ているのでしょうか。これはシンプルなデザインだから似てしまった例です。

他にはシンプルといえば日本の国旗も白地に赤丸というシンプルな美しさがありますが、当然似た国旗があります。

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一番有名なのはバングラデシュでしょう。日本の白地に赤丸に対して、バングラデシュは緑地に赤丸です。

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そしてデンマーク領グリーンランドは、日の丸と同じ赤と白ですが上下半分づつの色使いという点が違います。

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最後にパラオ。日の丸が太陽を表しているのに対して、パラオの国旗は月を表しています。

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このように、そっくりな国旗はたいていの場合隣り合っている国同士なので、余計にどこの国だか見分けがつきにくいのです。

もうこれは覚えられないということで、諦めるしかなさそうです。

 

 

 

 

 

Reference;

KnowledgeHub:https://youtu.be/XfOTnkGyV-c

PolyMatter:https://youtu.be/6HWfE3tlXIM

若者と子育て世代は知っておきたい 2050年までに世界で起こること

2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客受け入れの準備や前回の東京オリンピックに向けて作られ老朽化したインフラの更新などが行われている日本。

逆に言えば、何かと2020年に向けてあらゆる事が動いている現在の日本でもあります。

しかし大人たちは2020年のお祭りを楽しめればそれでいいかもしれませんが、これから進学先や就職先を決める若者や現在子供を育てている世代は東京オリンピック後に世界で起こることを知ってから、将来を決めても遅くないのではないでしょうか。むしろ、東京オリンピック後に世界がどうなるかの方がずっと重要です。

 

そこでここでは「Real Life Lore」が紹介している2020年以降に世界で起こることを時系列にしてみました。

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2020年

サウジアラビアに建設中のジッダタワー(Jeddah Tower)が高さ1008メートルとなり、ドバイにあるブルジュ・ハリファを抜いて世界一背の高いビルになる。

アメリカの宇宙ベンチャーであるビゲロー・エアロスペース社(Bigelow aerospace)は、宇宙に長期滞在できる商業宇宙ステーションを建設予定。

 

2021年

インドが同国初の有人宇宙飛行を実施予定。

 

2022年

中国が独自の宇宙ステーションを建設予定。

カタールワールドカップ開催

北京冬季オリンピック開催

 

2023年

ミッキーマウスの最初期の作品の著作権が消滅。

 

2024年

Space X社が有人飛行の準備として火星に向けて物資を打ち上げ。

国際宇宙ステーションの運用終了。

 

2025年

チリにハッブル宇宙望遠鏡の10倍の解像度を持つ天体望遠鏡である巨大マゼラン望遠鏡が完成。

イギリスが石炭発電を終了。

 

2026年

Space X社が有人火星飛行実施。

NASAが小惑星への有人飛行を実施。

1882年に建設が始まったサグラダファミリアがついに完成。

 

2027年

前年に打ち上げられたSpace X社の有人宇宙船が火星に到着。

 

2030年代

NASAが火星有人飛行を実施予定。

中国が月面有人飛行を実施予定。

 

2031年

ロシアが月面有人飛行を実施予定。

 

2036年

スティーブン・ホーキング博士やFacebookのマーク・ザッカーバーグらも支援しているブレークスルー・スターショットが、レーザーで光速の20%まで加速させた人工衛星を太陽系から最も近い恒星があるケンタウルス座星系に飛ばす予定。

 

2037年

夏に北極の流氷が初めて完全に無くなる。

 

2040年

イギリスとフランスがガソリン車とディーゼル車の販売を禁止。

 

2042年

世界人口が90億人を突破。

アメリカ国内で白人が少数派になる。

個人資産100兆円の人物が現れる。

 

2044年

ロードオブザリングとホビットが著作権切れになる。

 

2045年

シンギュラリティが起こり、AIが人間の知能を超える。

 

2050年

アマゾンの森林の半分が消滅。

世界人口の70%が都市に住む。

世界人口の半数は清潔な飲み水にアクセスできない。

世界の平均寿命が76歳になる。

 

 

 

 

いかがでしょう。

ここにピックアップされていることだけみても、世界は今とはかなり異なるものになりそうです。

これらを踏まえて、将来設計をしてみるのもいいのではないでしょうか。

 

 

 

空飛ぶクルマではなく地下トンネルこそ未来の交通手段になるか

これまで馬、蒸気機関、車、飛行機といった新しい交通手段を獲得するたびに人々の生活は大きく変わってきました。

そしてまた一つ、未来の交通手段がもうすぐ現実のものになろうとしています。

 

 

空飛ぶタクシー計画

ライドシェアリングサービスのUber。創業者トラヴィス・カラニック氏の辞任や個人情報流出を金銭で解決しようとしていた事実がリークしたり、ソフトバンクによる出資など話題がつきませんが、本業で注目すべきなのはNASAと提携して進めている空飛ぶタクシー計画であるUber Airでしょう。Uberは既にUber Elevateという空飛ぶタクシー計画を発表していましたが、NASAとの提携でさらに計画実現に一歩近づいた印象です。

Uberが進める空飛ぶタクシー計画は、eVTOLと呼ばれる電動の垂直離着陸機でビルの屋上などから空港へ、空を飛んで短時間で移動するというものです。

既にテキサス州ダラスとアラブ首長国連邦のドバイで2020年までにテスト飛行を行うと発表していましたが、NASAとの提携に合わせてロサンゼルスも計画に加わりました。

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コンセプト映像の通りになるとすれば、近未来SF映画で見た世界がもうすぐそこまで来ているわけですね。

ところが未来の交通手段について、ある人物は別の見方をしているようです。

 

 

地下トンネル網計画

未来の交通手段は空飛ぶタクシーではないと主張している人物がイーロン・マスク氏です。オンライン決済サービスであるペイパルの前身にあたる会社を立ち上げ、電気自動車のテスラや民間ロケット会社スペースXなどを率いる実業家ですが、大学時代の専攻は物理学であり今でも多くのプロジェクトでは彼自身がチーフエンジニアを務めているほど正真正銘科学技術に精通している実業家です。

そんなマスク氏が、新たに立ち上げた会社がトンネル掘削会社でその名もボーリングカンパニー(Boring company)。

ボーリングとは、掘削技術でもありますが英語の「退屈な」という意味もあるので、ボーリングカンパニーとは掘削会社とも取れるし退屈な会社とも取れます。どうやらこの会社は実業というよりは趣味に近いようです。

彼がボーリングカンパニーで取り組もうとしている未来の移動手段も、コンセプト映像として公開されています。

youtu.be

 

基本的なコンセプトは、地下に立体的にトンネルを掘って、そこをスケートボードのようなものに乗った車が移動するというものです。

公道とトンネルはエレベーターで結ばれ、トンネル内では時速200kmほどで移動することを想定しているそうです。

 

空飛ぶクルマの問題点

なぜ地下トンネルでの移動網を構想しているのか、彼は空飛ぶタクシーの問題を以下のように指摘しています。

 

基本的に地上よりも地下の方がスペースがある。実際世界一深い鉱山は、世界一高いビルよりも背が高い。

空飛ぶクルマは騒音が大きい。

飛行するために生じる風が強い。

何より、頭の上を無数のクルマが飛んでいたら不安でしょうがない。

 

 

特に最後にマスク氏が指摘する通り安全性は問題でしょう。以前当ブログでも紹介した70年代ニューヨークにあったヘリコプターシャトル便の例も、パンナムビルの屋上からJFK空港まで渋滞を避けて空を飛ぶUber Airと全く同じコンセプトでした。ところがある日事故で死傷者が出て、ニューヨーク上空は飛行禁止になってしまったのです。

空飛ぶタクシーはまず安全性を証明できなければ、無数の機体が人々の頭上を飛び交う商用サービスを開始するのは難しいでしょう。

 

地下トンネル網の実現性

しかし一方で、地下に穴を掘るのは巨額の費用が必要ではないのか、という疑問が湧きます。今でも地下鉄や自動車用トンネルの工事には巨額の費用がかかっていて巨大な交通ネットワークを地下に構築するというのはあまり経済的とは思えません。

 

この点に関してはイーロン・マスク氏自身も、例えばロサンゼルスで地下鉄を1マイル延長するには約100万ドルかかっていて、しかもこれは世界一高い例ではないとしてトンネルを掘る費用は課題であると考えているようです。また地下トンネル網の実現には、費用を10分の1程度にする必要があると認めています。 

そこでマスク氏は、どうやって費用を10分の1にするか以下のような道筋を立てているそうです。

まず、トンネルの大きさは車が乗るスケートが通れるだけの大きさにして、通常のトンネルより直径を半分かそれ以下にする。つまり断面積を4分の1以下にするといいます。また、現状のトンネル工事は、地面を掘ってはそこに壁を作るという手順を繰り返して掘削を進めており、この二つを同時進行できるような掘削機を作れば2倍の効率になるとしています。ここまでで、トンネルの断面積4分の1に掘削効率2倍で、理論上の掘削費用は8分の1になっています。さらに、トンネル掘削機自体の効率も今より上げられるはずとして、10分の1達成の手段を説明しています。

このように、イーロン・マスク氏の突拍子もない計画は、たいてい物理的にギリギリ可能であるところが興味深い点です。荒唐無稽に思える計画も必ずフューチャリストの未来予想とは一線を画しています。

未来

 

さて、近未来SF映画でも基本的に移動手段は空を飛ぶ乗り物であって、地下のトンネル網を移動するという描写はそれほど見かけません。

現実にやってくる近未来の移動手段は、空飛ぶクルマと地下トンネルのどちらになるのでしょうか。今後も両社の計画から目が離せません。

 

 

 

 

 

Reference;

TED:https://youtu.be/zIwLWfaAg-8

アクション映画がつまらなくなった6つの理由

YouTubeで映画レビューをしているChris Stuckmannさんのチャンネルに、現代アクション映画の問題点という動画がありました。

内容に全面的に賛成なことと彼自身がこの意見を広めて欲しいと言っているので、ざっと要点を紹介したいと思います。

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最近のアクション映画が興行的にも内容的にも失敗している主な理由として、彼があげているのは次の6つです。

 

 

1.ストーリー

悪党が世界を滅ぼすというストーリーはいい加減みんな見飽きている。

ストーリーで成功している例はキアヌ・リーブス主演の「スピード」。バスの速度を落とすと仕掛けられた爆弾が爆発するという分かりやすい設定で、2時間の間ずっとスリル満点。主人公は一瞬たりとも気が抜けないから、観客はずっと興奮して映画を観ていられる。

同じくキアヌ主演の「マトリックス」は、アクションシーンだけではなく我々の知っている世界が仮想上にあるというストーリーでも観客を驚かせた。

「レイダース」では、ナチスが失われたアークを探していてハリソン・フォード演じるインディー・ジョーンズも同じものを追っている。この設定で主人公は常に行動し続けることになり、一瞬たりとも話が止まらない。 

もし、ストーリーが早いペースで進まないなら、アクション映画として何かが間違ってる。

 

 

2.ヒーロー

アクション映画には観客が感情移入できる主人公が不可欠。成功例は、ブルース・ウィリス主演「ダイハード」の主人公であるジョン・マクレーン。彼は奥さんとヨリを戻そうとしている男で、ただ運悪く事件に巻き込まれた人。だから本格的にストーリーが始まると彼の成功を観客みんなが願う。

ジョン・マクレーンは、ダイハード1から4まで愛すべきバカ野郎だった。それがダイハード5では通行人を殴るような、ただのバカ野郎になっている。人を気遣う警官というヒーローを失ってダイハード5は大失敗だった。

 

 

3.ヴィラン

映画は悪役の良さ以上には良くならない。そして素晴らしい悪役はヒーローの対極にあるが一点だけつながりを持っている。

成功例は「ターミネーター2」のT1000。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT800と同じターミネーターだが、液体金属でできたT1000の方が力が上。だからヒーローに本気で立ちはだかる存在になる。

もう一つ重要なことはモチベーションが理解できるということ。ただ単にお金が欲しいとかではダメ。「007 カジノロワイヤル」の悪役ルシーフは、投資に失敗して組織に命を狙われているからどんな事をしてでもお金が必要なのが理解できる。悪役であっても人間性が見えるということ。イスに座って猫を撫でてる謎の組織のボスではない。

究極の悪役であるスターウォーズのダースベイダー。彼もルークとの接点やどうして彼がダースベイダーになったのかという点で人間性がある。

 

 

4.スタント

スタントなしのアクション映画など考えられない。

ここでキャスティングは非常に重要。

好例はトム・クルーズ。「ミッションインポッシブル」のスタントで高評価を得て以降徐々にスケールアップして、もはやアメリカのジャッキー・チェンになった。「ゴーストプロトコル」では実際に彼自身が世界一の高層ビルであるブルジュ・ハリファで宙吊りになって撮影している。実際にトム自身がやっているから観客も手に汗握る。

もちろん危険なことをするだけが全てではない。

ハリソン・フォードキアヌ・リーブスは、体の動きを使った演技であるフィジカルアクティングが上手い。カット割りなどでごまかす必要がないので観客はストレスなくアクションを楽しめる。

 

 

5.カメラワーク

カメラワークの問題点は、シェイキーカムと言われる画面がコンスタントに揺れる撮影手法でこれが何故か流行っている。ゆらゆら揺れてはっきり見えない映像に音響を入れて、安易に何かが起こっているかの様に見せかける騙し手法。多くは役者がアクションシーンに対応できないことを隠すために使っている。

「ボーンアルティメイタム」が成功したのはシェイキーカムをなにかを隠すために使っていないから。マット・デイモンや他の役者が相当な訓練を積んでいるし、編集が絶妙。「マトリックス」や「ジョンウィック」なども、ワイドショットで何が起こってるか観客にはっきり見せている。

ただし、役者が訓練しすぎるのには危険性もある。特定の動きを訓練し過ぎてダンスの様になってしまうことがある。

スターウォーズエピソード3でのユアン・マクレガーヘイデン・クリステンセンライトセーバーバトルは美しすぎて危険な戦いには見えない。

 

 

6.ヒーローの弱さ

良いアクション映画の条件として最も重要なこと。

例えば、スカーレット・ヨハンソン主演の「ルーシー」。映画は見ごたえがあるが、主人公が覚醒して以降は誰も彼女に太刀打ち出来ないのでアクションシーンに何の緊張感も生まれない。

ヒーローが生き残れるかどうか分からない、というのが必要。

マトリックス」と「マトリックス リローデッド」はいい比較になる。「マトリックス」ではバトルシーンはリアルで主人公ネオは血を吐き本当に勝てるのか観客は疑いはじめる。「リローデッド」では、ネオは無敵の存在で人形みたいなエージェントスミスを次々と吹き飛ばし何の危険も感じない。

 

では「レイダース」のトラックシーンはなぜ完璧なのか。

インディージョーンズは腕を撃たれて、悪役の兵隊にトラックから落とされそうになる。劇中でヒーローが最も弱っているシーン。素晴らしいアクション映画には必ずと言っていいほどこうした主人公が危険にさらされるシーンがある。だからその後で主人公が状況を好転させて悪役をやっつけると観客はスッキリする。

インディージョーンズ最後の聖戦」にも「魔宮の伝説」にもこういったシーンがあるが、「クリスタルスカルの王国」には全く無い。だから「インディージョーンズ4」は成功できなかった。

 

 

 

 

いかがでしょう。

もちろん映画はアートでありエンターテインメントでありビジネスでもあるので、内容をどう捉えようと人の勝手です。正解も不正解もありません。この中で悪い例としてあげられた映画が好きな人もいるでしょう。それで全く問題はありません。

しかし、ここにあげられた6つのポイントはかなり的を得ていると思います。

 

客層が近いジャンルとしてアメコミヒーロー映画が近年絶好調ですが、伝統的なアクション映画の復活も是非期待したいところです。

 

 

 

打ちやすいからではない キーボードの配列がQWERTYになった理由

みなさんが使っているパソコンのキーボードは、特殊な例を除けば左上から順にQWERTYの並びになっていると思います。現在事実上の標準キーボードになっているこのタイプは、QWERTYの並びをそのまま読んで通称クワーティキーボードです。

キーボード

キーボードがなぜこの並びなのか、一番有名な説はタイプライター時代にはキーを一つずつしか押せなかったために、連続して打つ可能性のあるアルファベットは離して配置したというものです。しかし、英語のアルファベットをキーが引っかからないように並べるやり方は無数に考えられ、QWERTYの配列になった理由を完全に説明しているとは言い難いです。

また、ある説では一番上の行だけでタイプライター(Typewriter)と打てるようにしたなどとも言われますが、残りの配列をどうやって決めたのか、なぜ一番上の一行でタイプライターと打つ必要があるのか全く意味不明です。

 

 

QWERTYの誕生

実は、タイプライター創世記の1840年から1890年頃までには、いろいろなタイプのキーボードが混在していたのです。そして現在世界中で使われているQWERTY配列は標準化団体などで仕様が策定されたわけではなく、1870年代にたった一人の人物によって考案されました。

 

 

例えば最初期の1840年代にHughes printing telegraphという電信機では、ピアノ型のキーボードにアルファベットが並べられていました。

ヒューズプリンティングテレグラフ

 

また1865年のHansen writing ballというタイプライターでは、半球状にボタンが並べられており、それを押す仕組みが採用されていました。

ハンセンのライティングボール

 

 

1873年、ここでクリストファー・レイサム・ショールズ(Christopher Latham Sholes)という人物が、QWERTYに近いキー配列を考え出します。ピリオドとR、AとZが逆に配置されており、Mは一段上のLの右にありましたが、それ以外は現在のQWERTYと同じ配列です。そして、銃やミシンを作っていたレミントン(Remington)社がこのデザインを購入してタイプライター事業に参入するのです。

その後もショールズは1878年にさらにキー配置を少し変えて特許を取得しますが、CとXが逆で引き続きMはLの右にありました。

この直後に、ショールズからキー配列のデザインを購入してタイプライター事業に参入していたレミントン社がついに我々の知っているQWERTY配列を使ったタイプライターの販売を開始したのです。

クリストファー・レイサム・ショールズ

クリストファー・レイサム・ショールズ

 

こうしてQWERTYキーボードは誕生しますが、この時点ではまだ沢山あるキー配列の中の一つでしかありませんでした。実際1889年には、左上からXPMCHRの配列になっているタイプライターが登場します。発案者はなんとクリストファー・レイサム・ショールズ。QWERTYの発案者ですら、のちに違うキー配列を提案しているのです。

では、発案者ですら改良を続けていたQWERTYはどうやって標準キー配列になったのでしょうか。

 

 

タイプライターを作る側

アメリカに独占禁止法ができる以前の1890年代、石油会社や鉄道会社などあらゆる業界で多くの会社がトラストを形成し、市場は大企業に独占され価格などは企業側が完全にコントロールする時代でした。もちろんタイプライター業界も例外ではなく、大手のタイプライター会社は手を組んで1893年にユニオンタイプライター社としてトラストを形成します。彼らの関心ごとはコストダウンで、ユニオンタイプライター社が採用したのが最大手だったレミントン社のQWERTY配列でした。

これによりQWERTYの市場シェアは圧倒的になります。

 

タイプライターを使う側

もう一つの理由は、キーボードの使用者です。

当時のタイプライターは、現在のパソコンとは全く違い訓練を受けた人しか使えませんでした。全員タイプライター学校に通ってタイピングを習得するのです。となるとタイプライター学校は、一番広く使われているタイプライターで生徒を訓練することになります。もちろんそれはQWERTYキーボードです。

当時多くの人がQWERTYよりも早く打てるキー配列があると考えていましたが、結局QWERTYキーで訓練を受けた人はそう簡単に別の方式のタイプライターには乗り換えられませんでした。

 

 

 

さて、キーボードというとパソコンのイメージからデジタル時代の産物の様な印象がありますが、実際にはエジソンが白熱電球の特許を出すよりも前に現在と同じQWERTY配列が完成していたのですから意外です。

そしてこうしている間にも新たに人々がQWERTYキーボードでタイピングの練習を始めているのですから、QWERTYが何か別のキー配列に取って代わられるというのもしばらくは起こりそうにありません。

 

 

 

 

Reference;

Vox:https://youtu.be/c8f6us-Sjlo

ジェット旅客機はもうこれ以上速く飛べないのか

大型連休になると海外へ出かける方も多いと思いますが、海外旅行で一つのネックになってくるのはやはりフライトの所要時間です。

例えば、成田空港からハワイのホノルルまでが7時間30分。オーストラリアのシドニー9時間45分。アメリカのロサンゼルス10時間。フランスのパリ12時間30分。アメリカのニューヨーク13時間。いずれもかなりの長時間です。

一体いつになったらもっと短時間で海外に行けるようになるのか調べてみると、驚くべきことに実は飛行機のスピードは以前から全く速くなっていない事がわかりました。

 

 

ジェット旅客機の登場

世界で最初にジェットエンジンを使った旅客機は、1952年5月2日にロンドンからヨハネスブルグに向かったブリティッシュ・オーバーシーズ・エアウェイズ・コーポレーション(BOAC)のフライトに使われた英国デ・ハビランド社製のコメットという飛行機でした。

デハビランドコメット

世界初のジェット旅客機Comet

コメットはピストンエンジンを使ったプロペラ機の時代に、ジェットエンジンを導入することでフライト時間を従来の半分にすることに成功します。例えば、当時のBOACによるロンドン-東京間のフライトはそれまでの86時間から36時間になったのです。

こうして幕を開けたジェット旅客機の時代。プロペラ機の代表格であったダグラスDC-3が巡航速度時速290キロだったのに対して、ジェット旅客機コメットの巡航速度は時速740キロにも達していました。

 

そしてすぐにイギリスのコメットに対抗して、アメリカからボーイング社の707とダグラス社のDC-8がデビューします。

ボーイングが1958年に完成させた707は、36人乗りのコメットに対して4倍も多い乗客を乗せられる上に巡航速度もより高速な時速965キロで、ベストセラーになりました。また707の1年遅れでデビューした当時世界最大手のダグラス社製DC-8は、巡航速度が時速870キロでした。

  

 

全く速くならない旅客機

このように1950年代後半には900[km/h]前後の速度に達していたジェット旅客機ですが、その後全くスピードは速くなっていません。

初飛行1969年でジャンボジェットの愛称を持つボーイング747型機が、巡航速度933[km/h]。

初飛行1994年で新型政府専用機に採用される777型機が、905[km/h]。

初飛行2009年で全日空が世界で最初に導入したドリームライナーこと787型機が、913[km/h]。

ボーイングのライバルであるエアバスも総二階建てのA380型機の巡航速度907[km/h]を筆頭に、総じて900[km/h]前後なのです。

 

これは不思議な気がしないでしょうか。

例えば東海道新幹線は1964年の開業時に時速210キロだった速度が35%もスピードアップして、時速285キロにまでなっています。時速320キロに達する東北新幹線との比較であれば、50%以上もスピードアップしているのです。

同じ50年の間に、ジェット旅客機のスピードはずっと足踏み状態です。

 

 

燃費の問題

ではなぜ飛行機は全く速くならないのか。理由の一つは燃費です。

現在のジェット旅客機で主に使われているターボファンエンジンにとって音速の80%程度以下、つまり900[km/h]程度のスピードで飛ぶのが最も燃費がいいのです。それより速く飛んでも遅く飛んでも燃料の無駄になります。

燃費がいかに大切か1回のフライトにかかる費用の内訳を見てみると、ボーイング787でニューヨーク-ロンドン間を飛行した場合燃料代は200万円ほどかかりますが、機体の値段は1フライトで割ると50万円もしません。航空会社にとって燃料代は、航空機本体よりも大きな出費なのです。事実、多くの航空会社はまだ使える飛行機を買い換えてまで燃費のいい最新式の旅客機を導入しています。

ジェットエンジンの効率

ターボファン(low bypass)エンジンは音速の80%程度で最高効率となる(By Audrius Meskauskas [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)) 

 

 

音速の壁

もう一つの理由が、音速の壁です。

音速付近では空気抵抗が著しく高くなる遷音速という領域があるため、それを避けて音速の80%程度以下で飛行するか音速より遥かに速いスピードで飛行する必要があります。

現在は引退してしまいましたが、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機のコンコルドも音速の2倍に当たる時速2150キロで飛行していました。

しかし、飛行機が音速を超える際にソニックブームと呼ばれる轟音が鳴る事がわかると、ほとんどの国で陸地の上空での超音速飛行は禁止されてしまったのです。こうなると超音速旅客機が使えるのは、ニューヨーク-ロンドン間のように航路のほとんどが海上の路線に限られてしまうので、超音速飛行が空の旅で主流になる道は途絶えました。

空気抵抗

音速(Mach 1.0)前後で増大する空気抵抗

 

 

 

つまり、今のジェット旅客機よりも少し速い遷音速は空気抵抗が大き過ぎて避ける必要があり、それよりもさらに速い超音速は海の上でしか使えないため、商業的に今以上の速さで旅客機を飛ばすのは難しいのです。

 

こうして海外旅行での長時間フライトは21世紀になった今でも解消する見通しはなく、今日も人々は小さい画面で映画を観ながら機内食は不味いと言って旅をスタートするのでした。

 

 

 

 

 

Reference;

Wendover Productions:https://youtu.be/n1QEj09Pe6k

Slice of MIT:https://slice.mit.edu/2014/03/19/airtravel/

Century of Flight:http://www.century-of-flight.net/new%20site/commercial/jet_liner.htm

Finding Dulcinea:http://www.findingdulcinea.com/news/on-this-day/May-June-08/On-this-Day--First-Commercial-Jet-Flight-Takes-Off-From-London.html

なぜ耳の形はこんなに複雑なのか

人間の頭のパーツの中で、耳だけがやたらと複雑な形をしていることに疑問を持ったことはないでしょうか。目、鼻、口は、その役割から考えればある程度納得のいく形をしていますが、耳はなぜこんな形なのかすぐにはピンときません。

ところが、人体は不思議なものでこれにもちゃんと理由があるのです。

耳

 

 

 

まず耳の役割は当然音を聞くことですが、ただ聞くだけではなく音のする方向を特定できることは非常に重要です。太古の昔にはこの能力がなければ人類は自然の中で生存不可能だったでしょう。

そして、人が音の聞こえる方向を特定する方法については、昔から多くの人がいろいろな考察をしています。

そのうち一人は、流体工学のベンチュリ効果を発見した人物として知られるイタリアの物理学者ジョヴァンニ・バティスタ・ベンチュリ(Giovanni Battista Venturi)です。画期的なベンチュリ効果を発見した人物にしては単純ですが、1790年代に耳を指で塞ぐという方法で音のする方向を特定するには両耳が必要という結論に至ります。そして、左右それぞれの耳で聞こえる音量が違うために人は音のする方向を特定できると考えたのです。

その他、ノーベル賞を受賞しているイギリスの物理学者ジョン・ウィリアム・ストラット(John William Strutt)は、右耳と左耳で音が届くタイミングの微妙なズレによって音源の方向が分かると考えました。また、頭が防音壁のようになって音が吸収されるため音源と反対側にある耳には高周波が届きづらい事も判断材料になっていると考えたのです。

 

結果的に現在では人はこれら全ての情報を使って音のする方向を特定していることがわかっています。

例えば頭の左方向に音源があれば、左耳の方が右耳よりも大きな音を時間的に先に捉えるので脳は音が左方向から来ていると判断するわけです。

 

 

 

しかしここで一つの疑問が生まれます。真ん中から音が来たらどうなるのでしょう。

顔の前5メートルから音が鳴るのも頭の後5メートルから音が鳴るのも上5メートルから音が鳴るのも、左右の耳は同じ音量を同じタイミングで受け取るという意味で違いがありません。

実は、これこそ耳が複雑な形をしていることに対する答えです。

もし耳がマイクのような形だったら、確かに前から音がきても後ろから音がきても聞こえ方は同じです。ところが、耳は前後にしろ上下にしろどの方向から見ても必ず違う形になっています。これによって音が来る方向が違えば耳での音の反響の仕方が変わり、鼓膜で音をとらえる際に特定の周波数が目立つようになっているのです。そして最終的には脳が周波数の特徴から判断して音がする方向を決定するわけです。

これは誰でも家で実験して確かめることが出来ます。

耳に粘土などをつけて音の反響の仕方を変えてやればいいのです。こうすると脳は耳の形が変わっていることを知る由もなく周波数の特徴だけから判断して、音のする方向を勘違いするのです。

 

 

ところで、犬が首をかしげているのを見たことはないでしょうか。

犬

もちろん人間の言葉が分からないくて首をかしげているのではありません。

実は犬がこの仕草をする一つの理由も音のする方向の特定です。首をかしげて左右の耳の位置関係を斜めにすることで、上下左右どちらの方向から音がしているかが特定しやすくなるのです。

 

 皆さんもどこからか気になる音が聞こえてきたら、犬のように首をかしげてみてはどうでしょうか。

 

 

 

Reference;

Knowing Neurons:http://knowingneurons.com/2013/03/15/how-does-the-brain-locate-sound-sources/

Acoustics Today:http://deutsch.ucsd.edu/pdf/AT-2008_4_3.pdf

SmarterEveryDay:https://youtu.be/Oai7HUqncAA