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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

ワイン好きの友人が勧めるワインはなぜ不味いのか

グーグルで「ワイン通」と入力して検索をかけると、候補として自動的に「ワイン通 うざい」が出てくるほど、一部のワイン通に対して嫌悪感を抱いている人たちは多いようです。

そして、あまりワインを飲まないワイン初心者からすると、そうしたワイン通の人が勧めてくる凝ったワインは飲んでも別にそれほどおいしくない。最悪の場合スーパーに売ってる安物のワインと何が違うのかわからない。といったことが起こります。

 

なぜこんなことが起こるのか。

この”ワイン通 問題”はどうやら世界共通のようで、海外で様々な検証実験が行われていることがわかりました。

 

 

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実験1 高いワインを飲む意味はあるのか

マジシャンから学者に転向した有名な心理学者リチャード・ワイズマン(Richard Wiseman)が行った次のような実験があります。

まず近所のスーパーで5ドルから50ドルまでの適当なワインを買ってきて、ワインの銘柄を伏せた状態で600人の被験者にテイスティングしてもらいます。被験者にはテイスティングした中でどれが高いワインだと思うかを回答してもらう、という単純な実験です。

実験後、銘柄が分からない状態でワインを飲んだこの600人の全回答を集計すると、全体の53%が実際に高いワインを当てていました。逆に言うと47%の人は外しているのです。これはだいたい半分の確率ですから、コインを投げて裏か表かで回答を決めるのと同じ確率です。言ってしまえば、人は値段が10倍違ってもどれが高いワインか分からないということです。

さらにヒドイことに、対象を赤ワインに限った場合には正解率はたったの39%にまで落ち込んだということです。

 

違いがわからないならなぜ高いワインを飲む必要があるのでしょう。

 

 

実験2 美味しくないものに高いお金を払う意味があるのか

全米ワイン経済学会(American association of wine economists)という団体が行った次のような実験があります。

実験の目的は、ワインの専門家によるアドバイスが一般消費者に対して有効かどうかを検証するというもの。こちらの実験では、被験者6175人に銘柄を伏せた状態でブラインドテイスティングをしてもらい、ワインに対して4段階で味を評価してもらいます。

結果を集計して平均化すると、ワイン専門家は値段の高いワインの方が美味しいと答え、一般の人は値段の高いワインの方が美味しくないと答えた、という集計結果となったのです。

この実験結果から、一般の人は高いワインを必ずしも美味しいとは思っていないことがわかります。

 

高いワインの方が美味しくないなら安い方がいいでしょう。

 

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実験3 赤とか白とか違いはあるのか

フランス、ボルドー第二大学の心理学博士フレデリック・ブロシェ(Frederic Brochet)が行った実験も見逃せません。

博士が行った二つの実験のうち一つ目は、54人のワイン専門家にワインのテイスティングをしてもらうというものですが、まず、何の種も仕掛けもなしに赤ワインと白ワインをテイスティングしてもらい味や香りを表現してもらいます。そして数日後、再び同じようにテイスティングを行いもう一度ワインの味や香りを表現してもらうのですが、今度は同じ白ワインの片方を食紅で赤くすることで、まるで赤と白の別々のワインが用意されているかのように見せかけます。

すると被験者は、先日と同じ表現を使って赤く染まった白ワインをまるで赤ワインを飲んでいるかのように認識したのです。この実験では、一人もそれが赤く染まった白ワインであることを見抜けませんでした。

 

肉には赤ワイン、魚には白ワインが合うとはなんだったのでしょう。

 

実験4 名前に騙されていないか

ブロシェ博士が行ったもう一つの実験は、同じワインを2つのボトルに分けて、片方にはそれが高級なワインであることを示す「グラン・クリュ」のマークが入ったラベルを貼ります。そして、2本のワインを飲み比べてもらうのです。すると先ほどの54人中なんと40人もがグラン・クリュのラベルがついたワインの方を褒めたのです。繰り返しますが、2本のボトルの中身は全く同じワインです。

 

もはやワインそのものではなくボトルが全てなのでしょうか。

 

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実験5 それでも味は違う

カリフォルニア工科大学脳科学の側面からワインに関する実験を行っています。

被験者たちに、5ドルから90ドルの5種類のワインを値段だけを伝えてテイスティングしてもらい、同時に被験者の脳波を測定するというものです。

しかし、この実験には実は一つ仕掛けがあって、5種類のワインが別々の値段を示されて次々出てくるのですが、実はワインは3種類しか用意されておらず実験を通して被験者は同じワインをどこかで2度飲むことになるのです。

ここまで読んできた方は、結果がなんとなく想像つくかもしれません。同じワインでも5ドルだと言われて出てきた場合と90ドルだと言われて出てきた場合では、被験者は90ドルのワイン方が美味しいと答えたのです。中身は5ドルのワインと同じだというのにです。

ではテイスティング中の脳波はどうだったのかというと、前頭皮質の一部が値段に強く反応しており、同じワインでも脳の反応は全く違うものだったのです。

 

結局、脳科学的にも証明されているように人間というのは期待した通りの味を感じるのです。中身が白ワインでも色が赤ければ脳は赤ワインの味を感じるのです。5ドルのワインでも90ドルだと言われれば、さらにボトルに「グラン・クリュ」のラベルが貼ってあれば、いくらでも美味しくなるのです。

 

 

では、ワイン好きは自分に酔っているだけなのかというとそんなことはありません。

ある安いワインと高いワインの比較ですが、安いワインはアメリカのオークの樽で6ヶ月寝かせるのに対して、高いワインはフランスのオークで1年。熟成も1年半に対して6年。広く流通しているブドウの品種を使うのに対して、特定の畑のブドウしか使わない。ボトル本体やコルクも全く質が違います。

高いワインには、ちゃんと高いなりの理由があるのです。

 

 

ワインに従うのか自分に従うのかという問題

最終的にこのワイン問題を解決するヒントは、スパイク・ジョーンズ監督の映画「her」に出てくる男女の会話シーンにありました。

 

男「フルーツは繊維が一番重要。だからフルーツから繊維を取り除いたジュースなんて飲む意味がない。」

女「好きなものを飲むのが一番健康にいい。ジュースが好きならそれを飲むのが一番。」

 

つまりジュースにしろワインにしろ、物事にはいつも二つの見方があってどちらも真実だということです。

ワイン通の人にとって、特定の畑で採れたブドウから作ったワインだけが持つ味わいは重要でしょう。一方、ワイン初心者にとって紙パックに入った500円のワインを美味しいと思うならそれがどんなブドウの品種から造られていようと問題ではないのです。

ワイン自体に価値を見出すか自分自身の感覚に価値を見出すのか、どちらが正解という話ではないということです。

 

 

結局、ワイン通もそうでない人も好きなお酒を一緒に飲んで楽しく過ごせればそれでいいのではないでしょうか。

 

 

 

Reference:

Wired:https://www.wired.com/2011/04/should-we-buy-expensive-wine/

Forbes:https://www.forbes.com/sites/katiebell/2012/07/09/is-there-really-a-taste-difference-between-cheap-and-expensive-wines/#2f4975363ae2

Winefolly:http://winefolly.com/tutorial/truth-cheap-vs-expensive-wine/