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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

昔の人は青が見えなかった

好きな色ランキング第1位の常連である「青」。ある調査によれば、世界中で青は2位以下を大きく引き離して好きな色の第1位なのだそうです。 

しかし驚くべきことに、長い歴史の中で人類が「青」の存在に気がついたのはかなり最近になってからだといいます。

 

青のない世界

1858年、のちにイリギスの首相を4期つとめるウィリアム・グラッドストンは、古代ギリシャの詩人ホメロスが書いた「オッデュッセイア」の中で、海が葡萄酒色と表現されていることに納得がいかなかったようです。しかも、ホメロスは牛も同じく葡萄酒色だと表現しているのです。

このことが気になったグラッドストンは、それぞれの色が何回出てくるか数えることにします。すると結果は黒が200回、白が100回、赤が15回、緑と黄が10回出てきたのに対して、青は0回でした。そして彼は、他の文献を含めても古代ギシリャの文章には青が出てこないことに気がつきます。

さらにグラッドストンはその他の文化圏の古い文献も同様に調査しましたが、アイスランドの神話にも中国の伝記にもヘブライ語の聖書にもヒンドゥーの教えにも、なんと青は出てこなかったのです。

 

なぜ青が出てこないのか不思議な気もしますが、古い文献に青が出てこないということに対しての答えは、1969年、カリフォルニア大学のブレント・バーリンとポール・ケイの二人が発表した有名な研究結果で説明ができます。

研究によれば言語の進化には人類共通のステップがあり、どの言語もまず第一に白と黒の表現から始まり、その次は必ず赤といった決まった順番で徐々に色が増えていき最終的にステージ7と呼ばれるステップに到達すると全ての基本になる11色の色彩を表現できるようになるというのです。

青はステージ5とされ、ここに到達していない言語では青を直接表現できないということになります。

ホメロスの時代の古代ギリシャ語は「青」を持っていなったのです。

 

ステージ1:白・黒(明るい・暗い)

ステージ2:赤

ステージ3:黄か緑

ステージ4:黄と緑両方

ステージ5:青

ステージ6:茶色

ステージ7:紫、ピンク、オレンジ、灰色

 

そもそも色とは

人間が目でとらえる色の違いとは、実際は光の波長の違いであって波長の長い赤から波長の短い紫まですべては連続しているのです。それぞれの色には明確な境目があるわけではありません。そのため連続する波長のどこを切り取って色の名前を付けるかには無数の可能性があります。

例えばロシア語には、他の言語と違い暗めの青と明るめの青にSiniyとGoluboyという全く別の単語が使われています。つまりロシア人にとってそれは明るめとか暗めとかではなく別の色なのです。

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色のスペクトラム (By Meganbeckett27 (Own work) [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons)

 

しかし色に呼び名があるかどうかは、ただ色を細かく呼び分けられるということ以上の影響があることも分かってきています。

 

マサチューセッツ工科大学の研究では、SiniyとGoluboyという単語を母国語に持っているロシア人の方がアメリカ人よりも青の微妙な違いを認識するのが10%早いという結果が出ています。

もう一つの例は、青と緑の区別がない言語を使うナミビアのヒンバ族です。

研究者が画面上に緑の四角形11個と青の四角形1個を表示させても、彼らは青い四角形を見つけられないか気がつくのにとても時間がかかるという実験結果を得ています。一方でヒンバ族は緑を表現する単語を複数持っているために、緑色の微妙な違いを見分ける能力はとても高いのです。

ちなみにこれは異文化圏だけの話ではありません。例えば、ピンクは明るい赤ですが、別の呼び名がついているので別の色だとして認識している人が大半ではないでしょうか。

 

もちろん、ロシア人もアメリカ人もヒンバ族も目が光の波長を捉える能力は同じです。つまり、母国語に単語が有るか無いかで、物の見え方が変わるということなのです。

ものが見えるかどうかは視力など目の能力で直接決まるように考えがちです。しかし実際には、母国語で二つのものが別の単語で定義されていればそれはすぐに見分けられますし、一つの単語しかなければ両者に違いがあることが見えないのが人間なのです。

 

哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、次のような言葉を残しています。

「私の言語の限界が私の世界の限界となる。」

 

近年、国際化の流れの中で英語教育の重要性が注目されていますが、日本語教育も決して疎かにしてはいけないでしょう。

多くの子供たちにとって、日本語の限界がその子にとっての世界の限界となるのです。 

 

 

 

Reference;

YouGov:https://today.yougov.com/news/2015/05/12/why-blue-worlds-favorite-color/

Business Insider:https://www.businessinsider.com.au/what-is-blue-and-how-do-we-see-color-2015-2

Eagereyes:https://eagereyes.org/blog/2011/you-only-see-colors-you-can-name

Vox:https://youtu.be/gMqZR3pqMjg

Vsource2:https://youtu.be/VIg5HkyauoY