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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

ジェット旅客機はもうこれ以上速く飛べないのか

大型連休になると海外へ出かける方も多いと思いますが、海外旅行で一つのネックになってくるのはやはりフライトの所要時間です。

例えば、成田空港からハワイのホノルルまでが7時間30分。オーストラリアのシドニー9時間45分。アメリカのロサンゼルス10時間。フランスのパリ12時間30分。アメリカのニューヨーク13時間。いずれもかなりの長時間です。

一体いつになったらもっと短時間で海外に行けるようになるのか調べてみると、驚くべきことに実は飛行機のスピードは以前から全く速くなっていない事がわかりました。

 

 

ジェット旅客機の登場

世界で最初にジェットエンジンを使った旅客機は、1952年5月2日にロンドンからヨハネスブルグに向かったブリティッシュ・オーバーシーズ・エアウェイズ・コーポレーション(BOAC)のフライトに使われた英国デ・ハビランド社製のコメットという飛行機でした。

デハビランドコメット

世界初のジェット旅客機Comet

コメットはピストンエンジンを使ったプロペラ機の時代に、ジェットエンジンを導入することでフライト時間を従来の半分にすることに成功します。例えば、当時のBOACによるロンドン-東京間のフライトはそれまでの86時間から36時間になったのです。

こうして幕を開けたジェット旅客機の時代。プロペラ機の代表格であったダグラスDC-3が巡航速度時速290キロだったのに対して、ジェット旅客機コメットの巡航速度は時速740キロにも達していました。

 

そしてすぐにイギリスのコメットに対抗して、アメリカからボーイング社の707とダグラス社のDC-8がデビューします。

ボーイングが1958年に完成させた707は、36人乗りのコメットに対して4倍も多い乗客を乗せられる上に巡航速度もより高速な時速965キロで、ベストセラーになりました。また707の1年遅れでデビューした当時世界最大手のダグラス社製DC-8は、巡航速度が時速870キロでした。

  

 

全く速くならない旅客機

このように1950年代後半には900[km/h]前後の速度に達していたジェット旅客機ですが、その後全くスピードは速くなっていません。

初飛行1969年でジャンボジェットの愛称を持つボーイング747型機が、巡航速度933[km/h]。

初飛行1994年で新型政府専用機に採用される777型機が、905[km/h]。

初飛行2009年で全日空が世界で最初に導入したドリームライナーこと787型機が、913[km/h]。

ボーイングのライバルであるエアバスも総二階建てのA380型機の巡航速度907[km/h]を筆頭に、総じて900[km/h]前後なのです。

 

これは不思議な気がしないでしょうか。

例えば東海道新幹線は1964年の開業時に時速210キロだった速度が35%もスピードアップして、時速285キロにまでなっています。時速320キロに達する東北新幹線との比較であれば、50%以上もスピードアップしているのです。

同じ50年の間に、ジェット旅客機のスピードはずっと足踏み状態です。

 

 

燃費の問題

ではなぜ飛行機は全く速くならないのか。理由の一つは燃費です。

現在のジェット旅客機で主に使われているターボファンエンジンにとって音速の80%程度以下、つまり900[km/h]程度のスピードで飛ぶのが最も燃費がいいのです。それより速く飛んでも遅く飛んでも燃料の無駄になります。

燃費がいかに大切か1回のフライトにかかる費用の内訳を見てみると、ボーイング787でニューヨーク-ロンドン間を飛行した場合燃料代は200万円ほどかかりますが、機体の値段は1フライトで割ると50万円もしません。航空会社にとって燃料代は、航空機本体よりも大きな出費なのです。事実、多くの航空会社はまだ使える飛行機を買い換えてまで燃費のいい最新式の旅客機を導入しています。

ジェットエンジンの効率

ターボファン(low bypass)エンジンは音速の80%程度で最高効率となる(By Audrius Meskauskas [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)) 

 

 

音速の壁

もう一つの理由が、音速の壁です。

音速付近では空気抵抗が著しく高くなる遷音速という領域があるため、それを避けて音速の80%程度以下で飛行するか音速より遥かに速いスピードで飛行する必要があります。

現在は引退してしまいましたが、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機のコンコルドも音速の2倍に当たる時速2150キロで飛行していました。

しかし、飛行機が音速を超える際にソニックブームと呼ばれる轟音が鳴る事がわかると、ほとんどの国で陸地の上空での超音速飛行は禁止されてしまったのです。こうなると超音速旅客機が使えるのは、ニューヨーク-ロンドン間のように航路のほとんどが海上の路線に限られてしまうので、超音速飛行が空の旅で主流になる道は途絶えました。

空気抵抗

音速(Mach 1.0)前後で増大する空気抵抗

 

 

 

つまり、今のジェット旅客機よりも少し速い遷音速は空気抵抗が大き過ぎて避ける必要があり、それよりもさらに速い超音速は海の上でしか使えないため、商業的に今以上の速さで旅客機を飛ばすのは難しいのです。

 

こうして海外旅行での長時間フライトは21世紀になった今でも解消する見通しはなく、今日も人々は小さい画面で映画を観ながら機内食は不味いと言って旅をスタートするのでした。

 

 

 

 

 

Reference;

Wendover Productions:https://youtu.be/n1QEj09Pe6k

Slice of MIT:https://slice.mit.edu/2014/03/19/airtravel/

Century of Flight:http://www.century-of-flight.net/new%20site/commercial/jet_liner.htm

Finding Dulcinea:http://www.findingdulcinea.com/news/on-this-day/May-June-08/On-this-Day--First-Commercial-Jet-Flight-Takes-Off-From-London.html