なぜ海外のマンホールは蒸気が出ているのか
映画に出てくる海外のシーンで、街のマンホールから蒸気が出ているのを見たことはないでしょうか。日本でも東京ディズニーシーのアメリカンウォーターフロントエリアに湯気が出るマンホールがありますが、これも海外のマンホールを再現したものだそうです。
それにしても、この湯気はいったい何なんでしょうか。
日本であれば地面から湯気が出てくるのは温泉だったりしますが、例えばアメリカのニューヨークシティのマンホールから湯気が出ているのが温泉だとは考えづらいです。しかし、温泉のように暖かい水が地面の下を通っているというのは実は正解に近いのです。
スチームヒーティング
ニューヨークでは1880年代にニューヨークスチームカンパニーという会社が巨大なボイラーで蒸気を作り、それを地下のパイプを通して街に送るというビジネスを始めます。ちょうど、発電所で電気を作って電線を通して街に送ったり、浄水場から水道管で水を送るのと同じことを、蒸気でやったのです。
この蒸気は暖房の熱源として使われます。それ以前は、暖炉や石炭ストーブを使って暖をとるのが一般的でしたが蒸気を使った暖房という選択が可能になったのです。
この仕組みは特に鋼鉄やエレベータが発明されて高層ビルの建設が可能になるとさらに歓迎されました。
1930年代に建設が開始されたエンパイヤステートビルなどの高層ビルでは、仮に自前の暖房設備を作ってビル全体を暖めるようとすると、とてつもなく巨大な石炭ボイラーが必要になりビルの内部にそのような設備を置くのは現実的ではありませんでした。蒸気をどこか別の場所で作りパイプを通して送ってもらうことで、ビルの設計の自由度が確保されたのです。
こうして地下のパイプを通じて蒸気を送るシステムは歓迎され、今ではニューヨーク全体で全長100マイル(160km)もの長さになっているのです。
ところで、100年以上前に作られたこのパイプは今メンテナンスが問題になっています。
ニューヨークでは、雨漏りする場所にバケツを置くかのように、高温の蒸気が漏れる場所に煙突が立てられていることがあります。
ということで、なぜ海外の街ではマンホールから湯気が出ているのか。
それは、高温になっている地下の蒸気パイプに雨水が当たり水蒸気になったり、そもそもパイプから直接蒸気が漏れていたりするからなのです。
歴史を振り返ると、街には水道が通り、ガス、電気、電話、インターネット回線が張り巡らされるなど新しいインフラが次々に追加されていっています。最近は水素を社会インフラにするという話もありますので、次は水素の供給ラインが整備されるという事になるのでしょうか。マンホールの下の世界は今後もどんどん姿が変わっていきそうです。
Reference;
Cheddar news : https://cheddar.com/media/why-steam-pours-from-new-york-city-streets
Free tours by foot : https://freetoursbyfoot.com/steam-from-streets-in-new-york/