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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

コンピュータの進化と物理的限界

なぜ去年出たiPhoneより今年出るiPhoneの方が性能がいいのか。なぜ5年前のPCより今年出たPCは処理が早いのか。

これらは有名なムーアの法則というアメリカの半導体会社インテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏が提唱したコンピュータの性能は18ヶ月毎に2倍になるという法則の通りに実際にコンピュータが進化していたからです。

ところが、近年はこれが限界に近づきつつあると言われています。

 

理由がVeritasiumで説明されていました。

youtu.be

 

コンピュータの原理

コンピュータは究極的には0と1ですべての情報を処理しているのはよく知られているところですが、どのように0と1を作っているのでしょうか。

分かりやすく言えばスイッチを使っているわけです。

スイッチをONすると電流が流れる、反対にスイッチをOFFすると電流が止まる、これによりコンピュータ上で0と1が表現できるのです。しかし、これは理科の実験で使われるような金属のレバーを使ってON OFFされるわけではなく、1948年に発明されたトランジスタという仕組みが使われています。

トランジスタは、半導体と呼ばれる電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間的な特性の物質であり、機械的にスイッチを動かすことなく電流を流したり止めたりする事ができるのです。これには通常シリコンが使われます。

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From Wikimedia Commons, the free media repository, Illustrator: Arne Nordmann (norro)

具体的には、上の図のように電子を注入したドレイン(Drain)とソース(Source)と呼ばれる部分がp型半導体と呼ばれる層で分離されており、そのままでは電流が流れないようにしてあります。そこにゲート(Gate)と呼ばれる端子を用意したらトランジスタの完成です。

ゲートに電圧をかけるとp型半導体のドレインとソース間に電子の通り道が出来て、電流が流れます。ゲートに電圧をかけるのをやめればまた電子の通り道はなくなって、電流が止まるというわけです。

こうして大量のトランジスタがON OFFを繰り返すことで、コンピュータは動いているのです。ちなみにインテルが1971年に発表したプロセッサでは、一つのチップの中にこうしたトランジスタが2300個入っていましたが、現在のチップでは10億個以上にもなっています。

 

物理的な限界

さて、コンピュータの性能が18ヶ月で2倍になるというムーアの法則は、別の言い方をすれば18ヶ月でチップに収まるトランジスタの数が2倍になるということです。つまり、トランジスタを18ヶ月で半分の大きさにしなければなりません。トランジスタの大きさは、先ほどのドレインとソースの距離で表現されるのが一般的で、両者の距離が40ナノメートルなら40nmプロセスの半導体などと呼ばれるのですが、これが年々小さくなっているわけです。

18ヶ月毎に半分ですから36ヶ月後には1/4になり、その後1/8、1/16、1/32と勢いは加速していきます。そして現在では、ドレインとソースの間の距離はシリコン原子50個ほどのサイズにまで到達しています。このレベルの小ささになってくると量子力学の世界に入り込み、たとえドレインとソースが繋がっていなくても電子は隙間を飛び越えて反対側に移動できてしまいますから、もはや電流のON OFFをコントロールすることはできなくなってしまいます。これがコンピュータの進化の物理的な限界です。

 

いつ物理的な限界に達するかは誰にもわかりません。しかし限界は7ナノメートル程度と言われている中、最新のチップはすでに14ナノメートルにまで到達しているのです。

あと数年で人類はコンピュータの物理的な限界に到達するかもしれません。