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サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

自動車産業の未来のキーワードCASEとSoftbank

昨今100年に一度の変革が起こっていると言われる自動車産業界ですが、かつて自動車の未来を正確に予測する方法が一つだけありました。メルセデス・ベンツのSクラスを見ればよかったのです。

ダイムラー社の高級車ブランドであるメルセデス・ベンツの上級セダンSクラスに採用された装備は、10年経つと大衆車に標準搭載されるのがお決まりのパターンだったからです。

例えば、シートベルトプリテンショナー、アンチロックブレーキ、エアバッグ、横滑り防止システムなどは全てベンツのSクラスが世界で初めて搭載した後に、今では大衆車に標準搭載されている装備の数々です。

ベンツ

メルセデス・ベンツ S-Class

 

そんなメルセデス・ベンツブランドを持つドイツのダイムラー社が今掲げている未来のクルマのキーワードがCASE(ケース)です。新聞やネット上などでも引用されるケースが増えています。

 

 

CASE

CASEとは、語呂合わせが好きなドイツ人らしくConnectivity(コネクティビティ)、Autonomous(オートノマス)、Shared&Services(シェア・サービス)、Electric(エレクトリック)の頭文字から造られた造語です。

 

ダイムラー社は、この4つのキーワードが未来の自動車産業の競争領域になると予想しているようです。

つまり外部との通信(コネクティビティ)、自動運転(オートノマス)、シェアしたり移動をサービスとして使う(シェア・サービス)。そして電動(エレクトリック)が競争領域というわけです。

 

実際に2016年のパリモーターショーではダイムラー社のディーター・ツェッチェCEOが、CASEとは何かを説明しています。

youtu.be

新型Smartの発表なども挟まれていますが、CASEに関する部分を要約すると以下のようになるでしょう。

 

 

今の時期たくさんの学生も見ているでしょうから彼らにメッセージです。

自分の今している勉強は将来の仕事に関係あるのだろうか。私は周りの誰もが機械工学を勉強しろという時代に電気工学を勉強しましたが、40年経った今役立っています。理由は電気自動車です。しかし、話は電動化で終わりません。我々には点を線で繋ぎクルマ全体を総合的に進化させる提案が出来るのです。

現在多くの自動車会社がモビリティープロバイダーになりたいと考えています。しかし、実際にはもっと大きなことが起こっています。車はA地点からB地点への移動に加えて、様々な面でライフスタイルをサポートする存在になろうとしています。

車はプロダクトから究極のプラットフォームになろうとしているのです。

柱は4つあります。Connected, Autonomous, Shared, Electricです。一つでも自動車産業全体をひっくり返す力がありますが、本当に革新的なのはそれらがすべて複雑に重なり合っているからです。そこで我々は、新しいチーム CASEを作りました。

一つずつ説明しましょう。

 

 

最初はConnectivity。

2014年には我々は既にMercedesMEを立ち上げています。

例えば駐車はいい例です。駐車場所を探すのに人々は10-15分使っています。

車のセンサーが空いている駐車スペースをスキャンして情報を他の車と供給すれば時間が節約できるので、他のことに使える時間が生まれます。例えば、電気工学を勉強するといったことです。

 

二つ目はAutonomous drivingです。

完全自動運転車の開発のためにキーとなるのはセンサーです。

ここで自然界は最高のヒントになります。音を使うコウモリ、磁場を使う鳥、水中の圧力を使う魚。

しかし、カメラや超音波センサーを進化させるだけでは不十分です。それら全てを組み合わせるセンサーフュージョンが必要です。

 

次のシェアリングは、非常に大きなチャンスです。我々はCar2Goを2007年に開始し既に2百万人のユーザーがいる世界最大のカーシェアになっています。また、ライドシェアリングではMyTaxiとHailoを合併し50の都市に 7百万人の登録者がいるヨーロッパ最大のオペレーターです。これは他のどの自動車メーカーも持っていないシェアリング事業に対する競争力を持っているということです。

次の大きなチャンスはPear to Pearカーシェアリングです。車は1日のうち23時間近くパーキングに止まってます。その時間を車の所有者の収入源に活用することができます。まさに民泊のairbnbの自動車版といったところです。

所有者は自動車を使用しない期間を登録しておけば、空き時間に他のユーザーが車を使用して車の維持費はみんなで分担するというわけです。

 

そして電動化。我々はバン、トラック、バス、乗用車を電動化しますが、それだけに止まりません。車両を超えたサービスも提供します。例えば、家庭や事業向け電源ストレージやワイヤレスチャージ、リサイクルといったものです。そこで我々は10億ユーロをバッテリー生産に投資しています。

 

 

要約ですが、ダイムラー社はCASEを上記のように紹介したわけです。

つまり、未来のクルマはインターネットに繋がって情報をやり取りする電動式の自動運転車で、人々はそれをシェアするというのです。

コンセプトF015

ダイムラー社のコンセプトカー F015

 

 

もちろんダイムラー社が単に車を作って売るだけではなく、シェアリング事業に力を入れているのには理由があります。

 

 

車の数は激減するかもしれない

独立シンクタンクのRethinkXが2017年に発表した研究結果では、法的に完全自動運転が合法化されてから10年以内にアメリカ合衆国での車を使った移動の95%が個人所有ではない電動の自動運転車によって行われることになると結論付けています。

平均的なアメリカ家庭であれば、個人で車を所有する代わりに自動運転車を使った移動サービスを利用することにより年間5600ドル(60万円以上)を節約できるとし、結果的に移動にかかるコストは従来の1/10にまで減るというのです。

そして最終的にはアメリカ国内の自動車の数は現在の2.5億台からわずか4400万台にまで減少するとしています。

 

もちろんRethinkXが予測しているタイムフレームはかなり極端なもので実際にはもっと時間がかかるかもしれません。それでも多くの専門家が考えている未来の方向性は自動車の個人所有の終焉です。

 

ダイムラー社を含むいくつかの自動車メーカーは、この長期的な流れに対して既に先手を打っているわけです。

 

 

Softbank

さて、日本から先手を打っているのがソフトバンクです。

一般的には携帯電話を含めた通信会社のイメージが強いソフトバンクですが、近年は10兆円規模のファンドを立ち上げるなど投資会社としての色合いが強くなっています。

そんなソフトバンクが、巨額の投資を行っている分野がライドシェアリング(Ride sharing)やライドヘイリング(Ride hailing)などと呼ばれるタクシー配車サービス分野です。移動を提供するサービス会社としてMaaS(Mobility as a Service)とも呼ばれます。

この分野の草分け的存在はアメリカのUberでしょう。一時は世界最大の企業価値を持つベンチャー企業でもありました。彼らの基本的なビジネスモデルは、A地点からB地点に移動したい人と車を使って収入を得たい人をスマートフォンのアプリを通してマッチングするというものです。基本的にはスマホでタクシーを呼ぶイメージですが、決済が自動的にオンライン上で行われるためその場で支払いの対応をする必要がないなど利用しやすさで従来のタクシーを駆逐しようとしています。こうしたサービスの登場によりアメリカでは従来ならば車を所有することが当たり前だった層が車を手放して移動をUberなどのモビリティサービスに完全に頼るということも起こっています。こうした人たちは、たとえ年間100万円をUberに使っても車を所有するよりは安上がりだからです。

さて、こうしたMaaSは世界中で競争が激化しています。アメリカにはUberのライバルとしてLyftがおり、中国のDiDi、シンガポールのGrab、インドのOla、ブラジルの99 Taxisなど地域毎に有力スタートアップが乱立している状態です。

しかし、ソフトバンクがこの分野で行なっている投資戦略は明確です。これら全ての企業に投資しているのです。

つまり、ソフトバンクが仕掛けている競争はUberが勝つのかLyftが勝つのかではなく、従来型の自動車会社が自動車産業の主導権を維持するのかソフトバンクのようなインターネット企業が業界を支配するのかというさらに大きな規模での競争なのです。

 

 

以前当ブログでも紹介したように、グーグルから独立したWeymoも自動運転車による無人タクシー事業の開始を目指しており、米クライスラーや英ジャガーからベース車両の提供が決まっています。

ソフトバンクはトヨタと合弁会社を設立して、ソフトバンクが出資しているMaaSにトヨタの車両を導入すると考えられています。

近い将来グーグルやソフトバンクなどのインターネット企業が自動車産業の覇権トップ争いをする中で従来の自動車メーカーはただの車両提供会社になるという未来も十分に考えられます。

 

自動車産業の姿が大きく変わろうとしている中、CASEとSoftbankは注目のキーワードになりそうです。

 

 

 

 

Reference;

CNBC:https://youtu.be/g1dTjROL8Uc

Forbes:https://www.forbes.com/sites/pamelaambler/2018/01/05/the-ride-sharing-war-for-global-dominance-has-one-clear-winner-softbanks-masayoshi-son/#212e86df7181

RethinkX:https://www.rethinkx.com