I found this

サラリーマンがネットで見つけたネタに対する感想

高くなったり安くなったり。飛行機のチケットの値段はどう決まるのか

インターネットが普及した昨今では、飛行機のチケットもインターネットを使って自分で購入する人が増えていると思います。そんな長期連休を前にインターネットで飛行機のチケットを手配しようとしている人たちにとってもどかしい問題は、いつチェックしてもチケットの値段が違うということでしょう。

前回見た時より1万円高くなっていたり、友人が言っていた値段より3万円も高かったり、とにかく調べるたびに変わる航空券の値段はいったいどのように決まっているのでしょうか。 

空港



 

航空券の値段の内訳

まず飛行機のチケットを買うときに支払うお金の中身ですが、航空会社の取り分になる航空代金の他にも税金、空港使用料が含まれていますし、燃料サーチャージや格安航空会社であるLCCを使うと機内食や座席指定料などを別途取られることもあります。

この中で税金や空港使用料は国や空港に対して支払うもので基本的に決まった額ですし、燃料サーチャージもジェット燃料の価格に応じて変わるもので毎日大幅に変わるようなものではありません。つまり航空会社の取り分であるチケットの値段が頻繁に変わっているということになります。

 

 

航空券の種類

では、なぜ航空会社に支払う費用はそんなに頻繁に変わるのでしょうか。

まず全ての始まりは、航空会社がどの飛行機をそのフライトに使うかを決定するところから始まります。航空会社は大きさの異なるいくつかの航空機を所有しているのが一般的で、機内のレイアウトは航空機によってあらかじめ決まっているため、これによりファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスなどそれぞれの座席数が決まります。当然、エコノミークラスが満席になってしまえばファーストクラスかビジネスクラスの席しか残っていないので、同じ便のチケットでも残っている一番安いチケットはビジネスクラスの値段ということになります。

ところが、エコノミークラスが売り切れると高いチケットしか残っていないなどという単純な話では全体像の半分も説明しきれていないのです。実は、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスなどそれぞれのクラスにはその中でまた異なるチケットの種類が設定されているのです。

例えば、便の変更が可能か、チケットの払い戻しが可能かといった各種の制限があったり、14日以上前にしか売っていないなど購入時期の制限などもあります。つまり、仮にエコノミークラスが飛行機に200席あったとしてもそのエコノミークラスの中でも例えば10種類の異なるチケットが設定されており、一つの種類のチケットは実は20枚しかないといった仕組みになっているのです。

 

複数のチケットがある理由

なぜ、航空会社はこんな複雑なチケットの仕組みを採用しているのでしょうか。答えは当然、会社の利益を最大化するためです。

航空機を利用する人は、大きく分けて二種類です。一方は旅行者で、もう一方はビジネス目的の出張者です。そして、旅行者は何ヶ月も前からチケットの購入を検討してある程度スケジュールを柔軟に変えられるのに対して、ビジネスの場合はもともとスケジュールの柔軟性が低く、場合によっては決まった日の決まった時間の便を利用しなければいけないことも珍しくありません。

また、旅行者はチケットの料金を自分で支払うため、フライトを調整してでも安いチケットを購入しようとします。それに対してビジネス客は、基本的に自分でチケットを買っているわけではなくスケジュールの方が重要なためチケットが多少割高でも問題にならないことが多いのです。

このように異なる二つの需要に応えるため、航空会社はフライトの何週間も前に売り出すチケットは安く、直前に売り出すチケットは高く設定するという戦略を取ることで、利益の最大化を図っているのです。出発日直前になっても座席が売れ残っている場合、航空会社はチケットの安売りをして空席を埋めようとすると考えている人も多いかもしれませんが、実際にはその逆で出発日に近づくとチケットの値段は高くなるのです。理由は前述の通りで、直前になって飛行機のチケットを買う人はビジネス客のような高いお金を払ってでもその便に乗らなければいけない理由のある人たちだからです。

では、事前に余裕を持ってスケジュールを決められる場合ビジネス客は観光客のように安くチケットが買えるのでしょうか。この点についても航空会社は少しでもチケットが高く売れるように工夫をしています。その一つがMinimum Stay Requirementです。安いチケットには航空券の発券条件に日曜日現地滞在必須などの条件を付けることで、ビジネス客にとって使いづらくしてもっと高いチケットを買わせるようにしているのです。

ビジネス客はフライトの曜日に対しても大きな影響を与えています。飛行機を使うビジネス客に最も多いパターンが週末を使わずに済む月曜日に出発し現地から木曜日か金曜日に戻ってくるというものです。そのため、最安値のチケットの中でもさらに最低の価格をつけるのは多くの場合ビジネス客が減る火曜日か水曜日発のフライトになるのです。

このように航空会社は非常に複雑なチケット料金システムを作り上げて、利益を最大化させているのです。お金を払えるビジネス客からは少しでも多くお金を取るようにして、値段に敏感な観光客には少しでも安いチケットを提供できるように調整する非常に優れた価格戦略と言えます。

 

 

他にも航空券の値段が変わる要因はあります。シーズンです。

長期連休などのホリデーシーズンには、単純に飛行機を利用したいと思う人の人数が増えるため需要と供給のバランスからチケットの値段が上がるということが起こります。また、チケットを買う側からするとホリデーシーズンではなかったとしても、世界のどこかの地域がホリデーシーズンのため旅行者が増える時期というのもありますので、注意が必要です。

 

ということで、皆さんもビジネス客の行動パターンと世界の観光客のホリデーシーズンを考慮に入れることで、少しでも安い航空券が購入できるようになるかもしれません。

 

 

 

 

 

Reference;

Flightfox:https://flightfox.com/tradecraft/how-do-airlines-set-prices

Wendover Productions:https://youtu.be/72hlr-E7KA0

なぜ歳をとると思い出話や若かった頃の昔話ばかりするのか

会社の上司だったり、バイト先の先輩だったり、習い事のクラスメイトだったり、いずれかの機会にいわゆるオジサンやオバサンと呼ばれる層の人たちと話す機会がある人は多いでしょう。もしくは、自分がオジサンやオバサンに当たる人もいるでしょう。こうした人達はよく自分が若かった頃の話をまるで昨日のことかのように話します。とっくの昔に社会人になっているのに、ずっと学生時代の話をしている人も珍しくありません。

これは不思議な気がしないでしょうか。人の記憶というのは、時間が経てば経つほど曖昧になるものです。1分前の出来事より1日前の出来事の方が記憶が曖昧ですし、1日前より1週間前の出来事はもっと記憶が曖昧です。

このように人間の記憶というのは最近のことをよく覚えていて昔のことはよく思い出せないと考えがちですが、実際のところそうとは限らないようです。

 

思い出のピーク 

1980年代にのちに心理学博士となる当時はまだ学生だったScott Wetzlerという人物がある実験を行います。

それは、人の記憶は本当に最近のことをよく覚えていて昔のことは良く覚えていないのかという調査でした。実験は年配の被験者に対してよく憶えている思い出の数を年齢毎に数えてもらうというものです。結果は当然最近の出来事をよく憶えているというものでしたが、驚くべきことに自身が20代の時の方がその他の年代の時よりも憶えている思い出の数が多いということも分かりました。

他にも1999年に学術誌Journal of Adult Developmentに発表された論文では、20代の思い出がもっとも記憶に残っているだけでなく、記憶に残っている社会的な出来事もまた10代20代に起きたことの方が自身がもっと歳をとってから起こった出来事よりも良く憶えていることが確認されています。

 

思い出のピーク

20歳頃思い出の数がピークになる

 

そして心理学者はこの現象を「Reminiscence Bump」(レミニセンスバンプ)と呼んでいます。

 

レミニセンスバンプが起こる原因

若い時の記憶の方が鮮明な理由は、初めての体験が多いからだといいます。

学校に行き始め、恋愛、就職、結婚、子供を持つといった人生におけるターニングポイントの半分以上がおおよそ15歳から30歳頃までに起こるのが、大多数の人のいわゆる”普通”の人生です。そしてこの時期に出会った人から一生の友人ができ、この時期に選んだ仕事を一生続けるのです。一方多くの人は50歳にもなれば、家も職場も新鮮味はなくなって安定した生活を送っていることでしょう。学生時代に初めて友人と旅行した記憶は、毎週同じ議題を話している会社の会議よりも鮮明に憶えているはずです。

脳科学の観点からも、初めて起こったことは日常的に起きていることよりも記憶に残りやすいと考えられています。1988年に行われたある研究では、人生で起こった大きな出来事の記憶のうち実に90%以上は人生で初めて起こったことだとされています。

 

イギリスのリーズ大学が行なった研究では自身のアイデンティティ形成が20代に作られるためであるという説を証明しています。

10代や20代に多くの人は自分が何者であるかというアイデンティティが形成されます。学生時代に経験したことは良い意味でも悪い意味でもその後の人生に大きな影響を与えるものです。

実験では、被験者はまず20個「私はxxxである」というセルフイメージを書き出します。そしてその中から3つを選びそれぞれについて10個の思い出を書き出してもらいました。最後に、先ほど選んだ3つのセルフイメージが作られた年齢が何歳だったかを書き出してもらいます。

実験の結果、セルフイメージに関する大半の思い出とセルフイメージそのものが作られた年齢がほぼ一致したのです。つまり、自身のアイデンティティ形成に関わった思い出は強く記憶されているということなのです。そして、この実験ではアイデンティティが形成された年齢の平均値は22.9歳でした。そのため20代の思い出は歳を取ってからも鮮明に憶えているのです。

思い出

 

しかし、脳科学や記憶のメカニズムだけでレミニセンスバンプは説明しきれないこともわかっています。

2010年に、デンマークで10歳から14歳の子供たちに将来の人生をストーリーとして書いてもらったところ、大半の出来事が20歳代頃に起こっていたのです。この現象は「Life Scripts」つまり人生の台本と呼ばれているものです。

なぜ自分は今のような自分になったのか、そして将来どうなるのか台本を持っているという考え方です。そして人は無意識のうちにこの台本に影響されて日々人生における重要な決断をしているというのです。足の遅い子供は短距離走でオリンピックに出場する台本は作りません。自分の人生で何が可能で何が不可能かを決めてしまうのです。これは親や友達や社会そして文化の影響を受けて子供の頃に作り始められるため、子供の時すでに人生の重大な出来事が何歳頃に起きるか潜在意識に植え付けられてしまっているというわけです。これは歳を取ってからも同じで、人生の重大な出来事は何だったかと聞かれると台本上で重要な出来事が起こる20代を取り上げるというのです。

 

レミニセンスバンプは他にも意外な場所にも現れています。アメリカのラトガース大学が行った研究では映画のリメイクやリブートは平均してオリジナルの20年後に行われるとされています。

映画の製作に影響力がある人は40歳代であり、40歳代の人にとって20年前が人生に最も影響を与えた時期であるために、その時代をテーマにした映画が繰り返し製作されているというわけです。

 

  

さて、人生100年時代と言われる昨今、人生は一つのストーリーではなくなりつつあります。人生の途中でそれまでとは全く違う生活を始める人が増えてくると人生における記憶のあり方も今までとは変わってしまうのかもしれません。 

 

 

 

Reference;

Slate:https://slate.com/technology/2013/01/reminiscence-bump-explanations-why-we-remember-young-adulthood-better-than-any-other-age.html

Curiosity:https://curiosity.com/topics/the-reminiscence-bump-is-why-you-pine-for-the-days-of-your-youth-curiosity/

PsychologyToday:https://www.psychologytoday.com/intl/blog/cusp/201210/the-reminiscence-bump

Changing Minds:http://changingminds.org/explanations/models/life_scripts.htm

なぜダイヤモンドは永遠の輝きになったのか

結婚といえばダイヤモンドの指輪。今では愛の象徴として婚約指輪の定番となっています。ルビーやサファイアなど高価な宝石はいくつかありますが、現代では実に婚約指輪の75%以上がダイヤモンドの指輪だと言います。

今ではすっかり婚約指輪の定番となったダイヤモンドリングですが、意外にも婚約指輪としてダイヤの指輪を贈るのが習慣になったのはごく最近の事なのです。

Diamond

 

元来より非常に貴重な鉱石だったダイヤモンドですが、19世紀の末に当時イギリスの植民地でケープコロニーと呼ばれていた南アフリカ共和国の領内でダイヤモンドの巨大な鉱脈が発見されます。当然のことながら、多くの探鉱者がこのチャンスに群がりましたが、イギリス人のセシル・ローズ(Cecil Rhodes)ほど成功した人物はいませんでした。イギリスの田舎に生まれ病弱だったローズは1880年にデビアス掘削会社を創業します。ライバル企業を買収しながら巨大化したデビアスは、1891年になる頃には世界のダイヤモンド生産の実に90%を占めていました。 

しかし、ダイヤモンドの需要は1930年代の大恐慌により激減してしまいます。そこでデビアス社は、ダイヤモンドの新しい使い道を探ることになるのです。

転機が1938年、デビアス社はマーケティングエージェンシーとしてアメリカのNW Ayerと契約して、ダイヤモンドは愛を象徴する贈り物であるというキャンペーンを展開します。ダイヤモンドの大きさが愛の大きさを表しているというものです。前述の通りデビアス社はダイヤモンド市場の90%を占めているのでデビアスの宣伝をする必要はなく、ダイヤモンドの需要が増えさえすれば結果的にデビアス社から買うしかないのです。

ここからデビアスとNW Ayerによる強力なキャンペーンが始まります。彼らはダイヤの宝石を身近に感じてもらえるようにあの手この手でダイヤモンドを宣伝します。

新聞やラジオではハリウッドの有名人がどんなダイヤモンドを身につけていたか宣伝し、アカデミー賞の授賞式に際してはダイヤモンドのジュエリーをスターに貸し出すということも始めました。ある時はダリやピカソの未完成の絵画を買い取って、絵画の中にダイヤのリングを登場させるといったことまで行ったのです。

Cecil Rhodes

デビアスの創業者セシル・ローズ

 

しかし中でも圧倒的な成功を収めたのが、NW Ayerの女性コピーライターだったフランシス・ゲレティ(Frances Gerety)が1947年に作ったダイヤモンドは永遠の輝き(A diamond is forever)というコピーです。のちに映画007シリーズ第7作の副題ダイヤモンドは永遠に(Diamonds are forever)にまでなったこのシンプルながら強力なフレーズは、ダイヤモンドは一度買ったら一生手放さないものだというイメージを作り上げて、人々から中古のダイヤモンドという発想を取り去ったのです。こうして常に人々が新品のダイヤモンドを購入するよう仕向けることに成功しました。

 

婚約指輪の値段は給料の二ヶ月分という基準もこのキャンペーンが作り出したものです。当初給料の一ヶ月分と謳っていたものが1980年代には二ヶ月分と改められ、今でも多くの人達がこの基準を意識しています。

 

こうして第二次世界大戦前にはアメリカの婚約指輪のうちたった10%しかダイヤモンドリングではなかったのに対して、第二次世界大戦後には80%の婚約指輪がダイヤモンドリングになっていました。婚約指輪の定義が完全に書き換えられたのです。

 

ちなみに、A diamond is foreverは1999年にAdvertising Ageによって20世紀最高のスローガンに選ばれています。

当事者のゲレティはのちにインタビューで、タイミングが良かっただけと語っています。彼女がNW Ayerに応募する直前に女性のコピーライターが辞めていたのです。また、当時は女性コピーライターがコピーを書くのは女性向けの商品だけという時代でした。A diamond is foreverのコピーも社内の会議では当初誰も乗り気ではなかったといいますが、その後25年間彼女はデビアスの宣伝に関わり続けました。

ゲレティ自身は生涯未婚だったそうですが、このように歴史上最も成功したマーケティングキャンペーンのひとつと言われるデビアス社のマーケティングは、ダイヤモンドの販売増加に成功しただけではなく結婚という文化そのものを変えてしまうほどパワフルなものだったのです。

 

 

 

 

Reference:

Bloomberg ; https://youtu.be/GCuwR4_kFQI

Britannica ; https://www.britannica.com/biography/Cecil-Rhodes

Hubspot ; https://blog.hubspot.com/marketing/diamond-de-beers-marketing-campaign

The New York Times ; https://www.nytimes.com/2013/05/05/fashion/weddings/how-americans-learned-to-love-diamonds.html

 

 

時間を分割して寝るのは有効なのか

会社の会議で、学校の授業で、移動中の電車バスタクシーで居眠りをしてしまう人は多いでしょう。忙しい現代人は睡眠時間が短くなる傾向にあり、特に日本人は世界的に見ても睡眠時間がとても短いようです。

世界の睡眠時間が短い国ワースト5は以下の通りで、日本人の平均睡眠時間はなんと6時間を下回り世界で一番睡眠時間が短いのです。

 

日本:平均5時間59分

サウジアラビア:平均6時間8分

スウェーデン:平均6時間10分

インド:平均6時間20分

フィリピン:平均6時間22分

 

 

反対に、睡眠時間の長い国ベスト5は次の通りです。多くの専門家が1日あたり7から9時間の睡眠を推奨しているということを考えると、睡眠時間が長い国ベスト5ですら推奨される睡眠時間をギリギリ超えている程度なのです。

 

ニュージーランド:平均7時間30分

オランダ:平均7時間28分

フィンランド:平均7時間26分

イギリス:平均7時間24分

アイルランド:平均7時間22分

 

もちろん、一概に各国の睡眠時間を単純比較できない理由もあります。65歳以上の人は1日に6時間半の睡眠でも十分とされていますが、2歳の子供は1日に14時間の睡眠を取ります。つまり、高齢者の多く若者の少ない国の方が国民の平均睡眠時間は短くなって当然です。

睡眠時間が短くなる要因として、競争社会というのも指摘されています。1日はどんな人にも平等に24時間しかありません。寝る時間を削ればその分だけ長く仕事や勉強ができるので、出世競争や受験戦争のために睡眠時間を削る人たちが増えているわけです。

 

ちなみに、過去の偉人たちの中にも睡眠時間が少なかった人たちがいるようです。

例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチは、3時間おきに20分寝るという変則的な睡眠をしていたという話があります。つまり1日の合計睡眠時間はたったの2時間10分となり、平均的な睡眠時間を取得している人よりも1週間あたり2日分以上も長く起きていたということになります。1週間が周りの人よりも2日も多ければ、それだけ偉大なことを成し遂げられそうです。もちろん、ダヴィンチの睡眠時間の話は都市伝説で、真実ではないという説が有力です。それでも、トーマス・エジソンやベンジャミン ・フランクリンなど、睡眠時間が短かったとされる偉人の例は多数あります。

sleep

 

分割睡眠

では、1日に短い睡眠を何度か取って合計8時間寝るのは、夜一度に8時間寝るのと同じなのでしょうか。

 

睡眠を分けて取ることは、専門的には多層睡眠や分割睡眠と呼ばれています。

実は、多層睡眠のように1日の睡眠を複数回に分けて取ることは健康上全く問題がなく、電球が発明される以前はむしろ、二層睡眠と呼ばれる日没後に睡眠に入り真夜中に数時間起きてその後また朝まで寝るというのが人類にとって一般的な睡眠の取り方だったのです。アメリカの歴史学者ロジャー・イーカーチ教授の研究によると産業革命以前に書かれた500冊以上の本でこの睡眠パターンが出てくるといいます。

 

さらにもっと睡眠を分割する人たちもいます。例えば、海洋横断ヨットの乗組員や宇宙飛行士、特殊部隊軍人などは、1日に合計2から7時間の睡眠を数時間の長い睡眠1 回と20分の短い睡眠を複数回取るという方法で睡眠時間を確保しています。

しかし、睡眠の問題は合計時間に限りません。

長い睡眠を取ることは、身体の疲れを取り除くのに有効であることが分かっています。人は一晩に何度もレム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる状態を行ったり来たりしており、これが健康上必要なのです。

レム睡眠は、REM - Rapid Eye Movementの頭文字を取ったもので、身体も脳も活動している状態です。この時に人は夢を見ると考えられています。対してノンレム睡眠は、睡眠に入った直後と深い睡眠時に起こる状態で、脳の活動量が低下します。ノンレム睡眠からレム睡眠に入るまでに約90分ほどかかると言われています。

多くの研究で、レム睡眠とノンレム睡眠の両方を行ったり来たりすることの重要性が指摘されており、マウスを使った実験では、睡眠を制限され続けた場合免疫力の低下が起こり2週間後には死に至るという研究結果もあります。人類はいまだになぜ睡眠が必要なのかは解明できていませんが、睡眠を取らないと死に至ることは分かっています。

 

睡眠は記憶にも重要であることが分かっています。1920年代に無作為の単語のリストを被験者に記憶させる実験で、睡眠をしっかり取ったグループの方が単語を多く記憶できるという結果から、睡眠が記憶に影響することがわかったのです。

他には痛みも睡眠と関わりがあることが分かっています。1970年代に行われた実験では、レム睡眠をさせていないマウスの方が痛みに対して敏感になるという結果が得られたのです。

最後にブルーライト。これはもう説明不要なほど広く知られていますが、睡眠前の数時間パソコンやスマートフォンの画面を見ていた場合睡眠パターンが乱れることが分かっています。ブルーライトは比較的近年の出来事で健康への長期的な影響に対する研究は始まったばかりですが、健康にいい影響があるとは考え難いでしょう。

 

 

さて、レム睡眠に入るのには90分程度必要で、レム睡眠とノンレム睡眠の両方が健康上重要である以上、あまり極端に睡眠時間を分割するのは良くなさそうです。テスト前や仕事の繁忙期でも出来る限りまとまった時間寝ることを心がけたいものです。

 

 

 

 

Reference:

Dreams:https://www.dreams.co.uk/sleep-matters-club/data-shows-a-shocking-worldwide-lack-of-sleep/

Scishow:https://youtu.be/-wa-qgApGQw

Scienceline:https://scienceline.org/2007/09/ask-leach-kramersleep/

Tuck:https://www.tuck.com/polyphasic-sleep/

身長は遺伝で決まるのか環境で決まるのか

世の中には背の高い人もいれば低い人もいますが、背の高い人は両親の背が高かったからその子供も背が高くなったということでしょうか。それともバレーボールをやって背が高くなったのでしょうか。別の言い方をすると、背の高さは遺伝子で決まるのか環境で決まるのか、どちらなのでしょうか。

バレーボール



身長を決定する要素

歴史を見てみると、18世紀にヨーロッパ人男性の平均身長は165cmでしたが、当時ヨーロッパから新天地アメリカに移住した人々の子供はたった一世代しか違わないのにもかかわらず平均身長が173cmもありました。また、産業革命の頃には環境が悪化したヨーロッパでは人々の平均身長は低くなり、環境破壊が改善すると再び平均身長が高くなるということも起こっています。

これらの例からも、食べ物や栄養状態などの環境的要素は間違いなく身長の伸びに影響を与えていると言えそうです。

 

しかし我々の実感として親が小柄なら子供も小柄、親が大柄なら子供も大柄というのは誰もが思うところです。やはり環境だけではなく遺伝的要素も身長には関係がありそうです。遺伝子はどの程度身長に影響するのでしょうか。

19世紀に科学者が最初に発見したのは裕福な人ほど背が高く貧しい人ほど背が低いという関係性です。そのため当時は、人間の優劣が身長に現れるとさえ考える学者がいたのです。当時イギリスの遺伝学者フランシス・ゴルトンは、大規模な身長の調査を行い親の身長から子供の身長は予測不可能なものの、兄弟の身長差は少ないことを発見しています。

また遺伝と環境が身長に与える影響を調べるのに全く同じ遺伝子を持つ双子は好都合です。特に、生まれた直後に何らかの理由で別々の環境で育てられることになった双子は、全く同じ遺伝子が環境の違いからどのような影響を受けるかを実際に確認することができます。もちろん、異なる環境で育った双子の身長は全く同じではなく差が生まれることが確認されており、遺伝子だけが身長を100%決定しているわけではないことがわかります。

 

近年では大規模な科学的調査も行われています。

オーストラリアのクイーンズランド医療研究機構が3375組の双子や兄弟を調べた研究では80%が遺伝によると結論づけています。フィンランドでは8798組の双子を調査して遺伝子が身長に与える影響は男性が78%女性が75%とされました。

一方で、遺伝子の影響は住んでいる地域によって異なることも分かっています。2004年に中国では385組の家族を調べて遺伝子の影響は65%としています。1978年にイギリスのニューキャッスル大学がアフリカで行った研究でも遺伝的要素の与える影響は65%とされました。

巨人



身長の推定計算

では、これらの事実から例えば生まれてくる子供の身長を予測することはできるのでしょうか。

今のところ遺伝子が身長を決める上で大部分を占めている事は分かっていますが、具体的にどの遺伝子がどのように身長を決めているのかは分かっていません。

それでもある種の計算式をもって子供の身長を推定する事は可能です。

 

仮に男性の平均身長が170cmで女性の平均身長が160cmだったとして、父親の身長が175cmで母親の身長が165cmの場合子供の身長は何センチになるでしょうか。

ここでは65%が遺伝的要因として計算してみます。

 

子供の身長 = 0.65 x [(父親の身長 - 母親の身長) + (男性の平均身長 - 女性の平均身長)] / 2

 

ここから、3.25cmという数字が導き出されます。

子供が男子であれば、男性の平均身長170cmにこの遺伝的要素3.25cmを加えた173.5cmが、遺伝的に期待される子供の身長ということになります。

ここに環境的要因も同じように計算すると1.75cmとなり、子供の身長は遺伝的に決まる173.5cmに環境要因のプラスマイナス1.75cmが加わって、最終的に171.75cmから175.25cmの間に収まる可能性が高いという推定が出来るわけです。

 

もちろん、重要な栄養素であるタンパク質やカルシウム、ビタミンAやDが極端に不足すれば遺伝子の期待通りには身長は伸びません。

大多数の人は年齢が10代半ばから後半になる頃には身長の伸びが止まりますから、遺伝子の持っている身長のポテンシャルをフルに発揮するためには、その年齢までに十分な栄養を摂取することが非常に重要なわけです。実はこのことが、先に述べたオーストラリアで20%しか身長に影響していない環境要因が、アフリカでは35%も占める理由の一つと考えられています。理由は、現代の先進国では重要な栄養素が不足するということはまず起こらないため、純粋に遺伝的な要素で身長が決まりやすいのです、一方でまだまだ栄養不足に陥りやすい発展途上国では、遺伝子だけではなく栄養の摂取状態などの環境的要因が先進国よりも大きな割合で身長に影響を与えているというわけです。

事実、数十年前に分断された韓国と北朝鮮の人々は平均身長に2.5cm以上も差が出ています。

 

 

さて、みなさんは遺伝通りの身長に成長したでしょうか。両親の身長から計算してみるのもいいかもしれません。

 

 

 

Reference:

Scientific American ; https://www.scientificamerican.com/article/how-much-of-human-height/

It's OK to be smart ; https://youtu.be/0cuO5OSDMbw

自動車産業の未来のキーワードCASEとSoftbank

昨今100年に一度の変革が起こっていると言われる自動車産業界ですが、かつて自動車の未来を正確に予測する方法が一つだけありました。メルセデス・ベンツのSクラスを見ればよかったのです。

ダイムラー社の高級車ブランドであるメルセデス・ベンツの上級セダンSクラスに採用された装備は、10年経つと大衆車に標準搭載されるのがお決まりのパターンだったからです。

例えば、シートベルトプリテンショナー、アンチロックブレーキ、エアバッグ、横滑り防止システムなどは全てベンツのSクラスが世界で初めて搭載した後に、今では大衆車に標準搭載されている装備の数々です。

ベンツ

メルセデス・ベンツ S-Class

 

そんなメルセデス・ベンツブランドを持つドイツのダイムラー社が今掲げている未来のクルマのキーワードがCASE(ケース)です。新聞やネット上などでも引用されるケースが増えています。

 

 

CASE

CASEとは、語呂合わせが好きなドイツ人らしくConnectivity(コネクティビティ)、Autonomous(オートノマス)、Shared&Services(シェア・サービス)、Electric(エレクトリック)の頭文字から造られた造語です。

 

ダイムラー社は、この4つのキーワードが未来の自動車産業の競争領域になると予想しているようです。

つまり外部との通信(コネクティビティ)、自動運転(オートノマス)、シェアしたり移動をサービスとして使う(シェア・サービス)。そして電動(エレクトリック)が競争領域というわけです。

 

実際に2016年のパリモーターショーではダイムラー社のディーター・ツェッチェCEOが、CASEとは何かを説明しています。

youtu.be

新型Smartの発表なども挟まれていますが、CASEに関する部分を要約すると以下のようになるでしょう。

 

 

今の時期たくさんの学生も見ているでしょうから彼らにメッセージです。

自分の今している勉強は将来の仕事に関係あるのだろうか。私は周りの誰もが機械工学を勉強しろという時代に電気工学を勉強しましたが、40年経った今役立っています。理由は電気自動車です。しかし、話は電動化で終わりません。我々には点を線で繋ぎクルマ全体を総合的に進化させる提案が出来るのです。

現在多くの自動車会社がモビリティープロバイダーになりたいと考えています。しかし、実際にはもっと大きなことが起こっています。車はA地点からB地点への移動に加えて、様々な面でライフスタイルをサポートする存在になろうとしています。

車はプロダクトから究極のプラットフォームになろうとしているのです。

柱は4つあります。Connected, Autonomous, Shared, Electricです。一つでも自動車産業全体をひっくり返す力がありますが、本当に革新的なのはそれらがすべて複雑に重なり合っているからです。そこで我々は、新しいチーム CASEを作りました。

一つずつ説明しましょう。

 

 

最初はConnectivity。

2014年には我々は既にMercedesMEを立ち上げています。

例えば駐車はいい例です。駐車場所を探すのに人々は10-15分使っています。

車のセンサーが空いている駐車スペースをスキャンして情報を他の車と供給すれば時間が節約できるので、他のことに使える時間が生まれます。例えば、電気工学を勉強するといったことです。

 

二つ目はAutonomous drivingです。

完全自動運転車の開発のためにキーとなるのはセンサーです。

ここで自然界は最高のヒントになります。音を使うコウモリ、磁場を使う鳥、水中の圧力を使う魚。

しかし、カメラや超音波センサーを進化させるだけでは不十分です。それら全てを組み合わせるセンサーフュージョンが必要です。

 

次のシェアリングは、非常に大きなチャンスです。我々はCar2Goを2007年に開始し既に2百万人のユーザーがいる世界最大のカーシェアになっています。また、ライドシェアリングではMyTaxiとHailoを合併し50の都市に 7百万人の登録者がいるヨーロッパ最大のオペレーターです。これは他のどの自動車メーカーも持っていないシェアリング事業に対する競争力を持っているということです。

次の大きなチャンスはPear to Pearカーシェアリングです。車は1日のうち23時間近くパーキングに止まってます。その時間を車の所有者の収入源に活用することができます。まさに民泊のairbnbの自動車版といったところです。

所有者は自動車を使用しない期間を登録しておけば、空き時間に他のユーザーが車を使用して車の維持費はみんなで分担するというわけです。

 

そして電動化。我々はバン、トラック、バス、乗用車を電動化しますが、それだけに止まりません。車両を超えたサービスも提供します。例えば、家庭や事業向け電源ストレージやワイヤレスチャージ、リサイクルといったものです。そこで我々は10億ユーロをバッテリー生産に投資しています。

 

 

要約ですが、ダイムラー社はCASEを上記のように紹介したわけです。

つまり、未来のクルマはインターネットに繋がって情報をやり取りする電動式の自動運転車で、人々はそれをシェアするというのです。

コンセプトF015

ダイムラー社のコンセプトカー F015

 

 

もちろんダイムラー社が単に車を作って売るだけではなく、シェアリング事業に力を入れているのには理由があります。

 

 

車の数は激減するかもしれない

独立シンクタンクのRethinkXが2017年に発表した研究結果では、法的に完全自動運転が合法化されてから10年以内にアメリカ合衆国での車を使った移動の95%が個人所有ではない電動の自動運転車によって行われることになると結論付けています。

平均的なアメリカ家庭であれば、個人で車を所有する代わりに自動運転車を使った移動サービスを利用することにより年間5600ドル(60万円以上)を節約できるとし、結果的に移動にかかるコストは従来の1/10にまで減るというのです。

そして最終的にはアメリカ国内の自動車の数は現在の2.5億台からわずか4400万台にまで減少するとしています。

 

もちろんRethinkXが予測しているタイムフレームはかなり極端なもので実際にはもっと時間がかかるかもしれません。それでも多くの専門家が考えている未来の方向性は自動車の個人所有の終焉です。

 

ダイムラー社を含むいくつかの自動車メーカーは、この長期的な流れに対して既に先手を打っているわけです。

 

 

Softbank

さて、日本から先手を打っているのがソフトバンクです。

一般的には携帯電話を含めた通信会社のイメージが強いソフトバンクですが、近年は10兆円規模のファンドを立ち上げるなど投資会社としての色合いが強くなっています。

そんなソフトバンクが、巨額の投資を行っている分野がライドシェアリング(Ride sharing)やライドヘイリング(Ride hailing)などと呼ばれるタクシー配車サービス分野です。移動を提供するサービス会社としてMaaS(Mobility as a Service)とも呼ばれます。

この分野の草分け的存在はアメリカのUberでしょう。一時は世界最大の企業価値を持つベンチャー企業でもありました。彼らの基本的なビジネスモデルは、A地点からB地点に移動したい人と車を使って収入を得たい人をスマートフォンのアプリを通してマッチングするというものです。基本的にはスマホでタクシーを呼ぶイメージですが、決済が自動的にオンライン上で行われるためその場で支払いの対応をする必要がないなど利用しやすさで従来のタクシーを駆逐しようとしています。こうしたサービスの登場によりアメリカでは従来ならば車を所有することが当たり前だった層が車を手放して移動をUberなどのモビリティサービスに完全に頼るということも起こっています。こうした人たちは、たとえ年間100万円をUberに使っても車を所有するよりは安上がりだからです。

さて、こうしたMaaSは世界中で競争が激化しています。アメリカにはUberのライバルとしてLyftがおり、中国のDiDi、シンガポールのGrab、インドのOla、ブラジルの99 Taxisなど地域毎に有力スタートアップが乱立している状態です。

しかし、ソフトバンクがこの分野で行なっている投資戦略は明確です。これら全ての企業に投資しているのです。

つまり、ソフトバンクが仕掛けている競争はUberが勝つのかLyftが勝つのかではなく、従来型の自動車会社が自動車産業の主導権を維持するのかソフトバンクのようなインターネット企業が業界を支配するのかというさらに大きな規模での競争なのです。

 

 

以前当ブログでも紹介したように、グーグルから独立したWeymoも自動運転車による無人タクシー事業の開始を目指しており、米クライスラーや英ジャガーからベース車両の提供が決まっています。

ソフトバンクはトヨタと合弁会社を設立して、ソフトバンクが出資しているMaaSにトヨタの車両を導入すると考えられています。

近い将来グーグルやソフトバンクなどのインターネット企業が自動車産業の覇権トップ争いをする中で従来の自動車メーカーはただの車両提供会社になるという未来も十分に考えられます。

 

自動車産業の姿が大きく変わろうとしている中、CASEとSoftbankは注目のキーワードになりそうです。

 

 

 

 

Reference;

CNBC:https://youtu.be/g1dTjROL8Uc

Forbes:https://www.forbes.com/sites/pamelaambler/2018/01/05/the-ride-sharing-war-for-global-dominance-has-one-clear-winner-softbanks-masayoshi-son/#212e86df7181

RethinkX:https://www.rethinkx.com

 

暖房と加湿器が欲しい。飛行機の中はなぜ乾燥して寒いのか

飛行機に乗って海外に出かける際に、客室内がとても寒いと感じたことはないでしょうか。

なぜ暖房を入れないのかなどと言う乗客もいるぐらいですが、もちろん暖房は入っています。国際線の旅客機が飛行しているのは1万メートル近い上空で、飛行機の外は極寒です。暖房なしでは客室内はとても人が居られるような環境ではありません。実際に、飛行機の車輪を格納するスペースは温度がマイナス50度を下回る寒さにまでなります。

通常のフライトでは、客室内は摂氏22から24度程度になるように暖房が設定されます。もし天気予報を見て気温が24度だったらとても過ごしやすいと感じる事でしょう。

では、快適な温度設定で暖房が入っているのになぜ飛行機の客室内はあんなに寒いのでしょうか。

aircraft cabin

 

まず、乗客はフライト中ずっと座席に座っているだけで体をほとんど動かしていないために、そもそも寒さを感じやすいという点が挙げられます。また、満員の客室では乗客から発せられる熱も多いため、客室の温度を一定に保つには、エアコンの吹き出し口からは冷たい空気を出さざるを得ないという点も余計に体を動かしていない乗客にとって寒さを感じやすくする要因になっています。さらに、飛行機では通常各座席毎にエアコンの温度を調整するということが出来ません。そのため、すべての乗客にとって最も快適な温度にはそもそも出来ないのです。

もちろん、室内が寒すぎたり暑すぎたりすれば、客室乗務員によって機内のゾーン毎の温度調整は可能になっています。しかし、乗客が何時間もシートに座っているだけなのに対して客室乗務員は動きっぱなしですから、温度の感じ方は全く違います。乗客が寒いと感じている時に客室乗務員は暑いと感じているということがあり得るのです。

 

ちなみに、室内が暖かいと低酸素症になるリスクもあり、もともと客室内をポカポカに暖めるということはしません。

 

 

乾燥

機内の寒さに加えて乗客を不快にするのは乾燥です。

なんとフライト中の客室内の湿度は12%程度しかなく、砂漠よりも乾燥している状態なのです。

しかしこれはある程度仕方の無いことかもしれません。国際線の飛行機が飛んでいるのは雲の上で、外の世界は湿度がほぼ0%です。そして客室内の空気は密閉されているわけではなく、エンジンから圧縮された高温の空気を取り込んで常に機体の外と中で空気を少しずつ入れ替えているのです。この際に乾燥した空気が客室内に入り込んでしまうのが乾燥の原因です。乾燥対策として飛行機の客室内全体を加湿するような装置は高額なだけでなく湿度で機体が錆びる心配も出てきます。

 

 

さて、現代の航空機は本当によく出来ていて、フライト中は自分が極限の環境下にいることなど忘れてしまいますが、空の上で普段着で居られるだけでも十分感謝に値するテクノロジーの恩恵です。

 

 

 

 

Reference:

The Telegraph;https://www.telegraph.co.uk/travel/travel-truths/why-are-planes-so-cold/

燃料タンクが空になってから車はどれくらい走れるか

近年、日本ではガソリンスタンドの数が激減しているそうです。経済産業省のデータによると平成24年度末の時点で全国には36,349カ所の給油所があったようですが、平成28年度末には31,467カ所と毎年1,000カ所以上の勢いでガソリンスタンドは減っている事がわかります。ピーク時の1990年代に60,000カ所を記録していたことを考えるとその数は半減してしまっているわけです。

つまり極端に話を単純化すれば、道路沿いにあるガソリンスタンドの数が半分になったので、次のガソリンスタンドまで2倍の距離を走らなければいけなくなった訳です。

 

ここで気になるのは、ドライバーがガソリンタンクが空に近づいていることに気がついてから、車はどれくらいの距離を走れるのかということです。

例えば、燃料警告灯が点灯して初めてドライバーがガソリンが減っていることに気がついたとして、そこから車はどれくらいの距離を走れるのでしょうか。

f:id:T_e_a:20180810172902j:plain 

 

どれくらい走れるのか

道を走っている最中にガソリンがなくなったら大変危険なことは想像に難しくないでしょう。例えば、高速道路を走行中に突然ガソリンがなくなって周りの車が時速80kmで走っている道の真ん中で停車するのはなんとしても避けたいところです。

自動車メーカーもそんなことは当然承知で、ガソリンの残量は通常フューエルゲージで確認できるようになっていますし、残量が少なくなると警告灯が点くのが一般的です。また、最近の車であればガソリンの残量からあとどれくらいの距離を走れるかを計算してくれるトリップコンピュータも当たり前の装備になりました。

f:id:T_e_a:20180810173849j:plain

しかしコンピュータが計算した走行可能距離は、あくまでもこれまでの走行データから計算された予測値です。ずっと高速道路を走ってきて下道に降りた瞬間に渋滞にハマったら、正確な走行可能距離を算出するのは至難の技です。

トリップコンピュータに頼らないとすれば、あとは自分の乗っている車が燃料警告灯が点灯してからどれくらいの距離を走れるのか知っておくという手もあります。

"YourMechanic”にアメリカの売れ筋車種が、燃料警告灯点灯から走行可能な距離がまとめられています。代表例を見てみましょう。

 

 

フォードF150 : 35 マイル

シボレーシルバラード : 25 マイル

トヨタカムリ : 65 マイル

トヨタカローラ : 60 マイル

日産アルティマ : 81 マイル

ホンダアコード : 72 マイル

ホンダCR-V : 62 マイル

ホンダシビック : 59 マイル

トヨタRav4 : 57 マイル

日産ローグ : 78 マイル

フォードフォーカス : 35 マイル

ジープチェロキー : 66 マイル

クライスラー200 : 69 マイル

シボレーマリブ : 50 マイル

スバルフォレスター : 62 マイル

スバルアウトバック : 65 マイル

トヨタプリウス : 76 マイル

マツダ3 : 69 マイル

マツダCX-5 : 67 マイル

 

1マイルは約1.6キロですから、トヨタのプリウスの場合には、燃料警告灯が点いてから120キロは走れることになります。これだけ走れれば問題なくガソリンスタンドまで辿り着けそうです。一方、シボレーのピックアップトラックであるシルバラードの場合、燃料ランプが点いてから40キロも走ればガソリンタンクは空っぽになるようです。広いアメリカのことを考えると警告灯がついた時点ですぐにガソリンスタンドに向かわないとガス欠になる危険がありそうですね。

 

 

燃料が1/4以下になるのは好ましくない

実は多くの専門家は、ガソリンの量を燃料タンクの1/4以下にしないよう勧めています。

例えば1990年代以前に造られた車では、燃料タンクの素材に金属が使われていました。そのため、燃料タンクは年月の経過とともに錆びる事があったのです。錆はやがて燃料タンクの底にたまり、ポンプで吸い上げられて燃料と一緒にエンジンに送られてしまい燃料ラインや燃料フィルターの詰まりの原因になるだけではなく、最悪の場合エンジンにダメージを与える事もあり得ます。

f:id:T_e_a:20180810173136j:plain

燃料タンクのカットモデル By Cschirp [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], from Wikimedia Commons

 

近年の車では燃料タンクの素材には樹脂が使われるようになり、錆の心配はなくなりました。しかし、ガソリンをエンジンに送り込む燃料ポンプは燃料タンク内に配置されるようになり、燃料に浸かった状態でポンプを冷却するよう設計されているのです。そのため燃料タンク内のガソリンの量が少なくなるとポンプの冷却能力が低下して、熱によりポンプの寿命が縮む可能性があるのです。

 

みなさんガソリンの残量には十分ご注意ください。

 

 

 

 

References;

YourMechanic : https://www.yourmechanic.com/article/how-far-can-you-drive-your-vehicle-on-empty-by-brady-klopfer

電気自動車が大気汚染問題を解決しない理由

現在世界の新興国の都市部で問題となっているのが深刻な大気汚染です。

特に中国の北京やインドのデリーなど大都市では、数メートル先が見えないほど空気が汚い日もあるといいます。

このような大気汚染の原因の一つとしてあげられているのが車の排気ガスです。旧式の自動車から排出される有害な微粒子はその大きさからPM2.5やPM10などと呼ばれていて、こうした微細な粒子が空気中に放出されて大気を汚染しているのです。

北京大気汚染

北京の大気汚染 By Berserkerus (Foto) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)  via Wikimedia Commons

 

 

この問題に対する解決策として、現在中国やインドに限らず世界の先進国も推進しているのが電気自動車(EV)です。

電気自動車はゼロ・エミッション・ビークル(ZEV:Zero Emission Vechile)直訳すると排出ゼロの乗り物とも呼ばれ、大気汚染対策の救世主と位置付けられているわけです。

確かに、ガソリン車やディーゼル車が化石燃料を燃やして排気ガスを出しながら走るのに対して、EVは電気モーターを動力源とするため車からは排気ガスが出ません。電気を作るのに化石燃料を発電所で燃やす必要がありますが、少なくとも人口が集中する都市部のど真ん中には排気ガスが出ないわけですから、各国政府はEVの普及を推進することで大気汚染対策にしようという狙いがあるわけです。

  

ところが、車という乗り物は排気ガス以外にも空気を汚しながら走っているという事実はあまり注目されていません。

イギリスのエジンバラ大学とオランダのINNSAというエンジニアリング会社が共同で自動車による大気汚染を研究した内容を発表しています。

 

 

排気ガスだけではない大気汚染源

まず車はもちろん排気ガスからPMを排出しますが、他にもタイヤの磨耗、ブレーキのダスト、道路の磨耗、道路に落ちたPMを舞い上げる、といった要素でも大気を汚しています。

 

排気ガスから主に排出されるのが、ガンの発生原因としても指摘されているPM2.5。それに対してタイヤ摩耗などの非排気ガスはPM2.5だけではなくPM10を多く含んでいます。PM10は主にスズ、銅、鉄、鉛などの重金属となっており、こちらも肺炎や遺伝子に損傷を与えるなどの健康被害の原因とされています。

つまり、排気ガス以外の要素でも自動車は大いに大気を汚染しているのです。

そして一番問題なのは、車から排出されているPMのうちPM2.5の85%、PM10の90%は非排気ガスが占めているという点です。つまり、そもそも自動車の排気ガスが出すPMは車が出すPMのうちのごく少量に過ぎないのです。

 

そして、非排気ガス系の大気汚染の発生量は車両の重量に大きく依存している点に注意が必要です。

例えばタイヤと路面の摩擦は重量が重い車の方が大きくなるため、タイヤや路面がすり減る量も車の重量が重ければその分だけ多くなります。また、ブレーキもブレーキパッドとタイヤホイールの摩擦を利用しているため、重量が重く運動エネルギーが大きい車の方が摩擦が大きくなりブレーキダストの量も増えます。道路に落ちたPMをより多く舞い上げるのも重い車です。

例えば、車体重量1200[kg]の小型車に対して1600[kg]の中型車は、タイヤ、ブレーキ、路面摩耗が50%も増加するとされます。さらに、2000[kg]の大型車になるとその量は小型車の倍にもなるといいます。

 

 

EVは重い

ここまで読んできた方はもうお気づきでしょう。EVの問題は、大量のバッテリーを積む必要があるためガソリン車やディーゼル車よりも車体が重くなる点です。

 

どれくらい重いのか、ここでは公平を期すために同じメーカーの同じ車種でガソリン車と電気自動車の2つのバージョンがラインナップされている車種に注目してみます。

まずは、ホンダのフィットです。ガソリン車の他に一時期米国でフィットEVというモデルが存在しました。フィットのガソリン版は車体重量1215[kg]に対して、フィットEVは1550[kg]もありました。その差300[kg]以上。割合で言えばEVの方が、27%も重たいのです。

他のメーカーの他の車種にも基本は同じことが言えます。ガソリン版のフィアット500に対してそのEV版である500eが24%重量増。スマートに対してスマートElectric Driveが29%増。シボレースパークに対してスパークEVが28%増。

その他、フォード、キア、フォルクスワーゲン、ルノーなどの車種も含めると平均でEVはガソリン車よりも280[kg]、24%も重いというのです。

Fit EV

ガソリン版より300kg重いフィットEV By bigbend700 [CC BY 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

 

 

結論から言えば、この重量のせいでEVから排気ガスが出ないという利点は全て食い潰されます。

エジンバラ大学とINNSAによると電気自動車、ガソリン車、ディーゼル車が出すPMの量は次のように結論づけられています。

 

< 1km走行あたりのPM2.5発生量 >

  • 電気自動車 : 65.7[mg]
  • ガソリン車 : 66.0[mg]
  • ディーゼル車 : 65.3[mg]

 

< 1km走行あたりのPM10発生量 >

  • 電気自動車 : 22.4[mg]
  • ガソリン車 : 23.2[mg]
  • ディーゼル車 : 22.6[mg]

 

 

かつては黒い煙を出しながら走るというイメージだったディーゼル車も最新式のクリーンディーゼルモデルでは、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるPM除去技術により99%以上のPMを取り除くことが出来るようになっています。

結果的に電気自動車とガソリンやディーゼル車を比較しても、PM2.5に関しては減らない。PM10が1-3%程度の減少ということで、PMに限って話せば電気自動車が大気汚染を改善するというシナリオには無理があります。

DPF

ディーゼルの排気ガスを劇的に改善したDPF

 

 

もちろん、以前当ブログでも紹介した通りEVによるCO2の削減は期待できますので、地球温暖化対策としてEVの普及を図るのは有効に思えます。

しかし、都市部の大気汚染に対しては最新式のガソリン車やディーゼル車を導入すれば、EVと同レベルの大気汚染対策になり得ることがわかります。ましてや、航続距離を伸ばすためにバッテリーの容量を増やしてますます車体重量が増えているEVは、都市部の大気汚染対策の救世主であるという考え方を改める必要があるかもしれません。

 

 

 

 

Reference;

Non-exhaust PM emission from electric vehicles : http://www.soliftec.com/NonExhaust%20PMs.pdf

 

金より高価な金属も使い捨てに。錬金術ではお金持ちになれない理由

紙幣というものが導入されて以降ずっとつきまとっている犯罪といえば偽造紙幣の使用です。誰でもコピー機でお札が作れたら、、、などと考えたことがあるのではないでしょうか。

しかし紙幣の偽造は犯罪であるだけでなく、現在世界の主要な紙幣にはコピー防止の技術が組み込まれており、コピー機は紙幣を自動的に認識して印刷を中止するようにできています。そのため、コンビニで1万円札をコピーして大金持ちになることはできません。

 

ユーリオン

紙幣の偽造防止の代表的なものはユーリオン(EURion)と呼ばれる技術で、日本の電機機器メーカーであるオムロンが基本特許を持っているため、別名オムロンリングとも呼ばれます。

詳細は非公開のため仕組みは不明ですが、紙幣に印刷された無数のリングによりコピー機やスキャナーが紙幣を認識できる技術です。

オムロンリング

500ユーロ札でのユーリオン使用例

  

CDS

他にも、世界の中央銀行によって組織された中央銀行偽造防止グループという団体もCDS(Counterfeit Deterrence System)という紙幣の偽造防止技術を開発しており、フォトショップなどの画像処理ソフトウェアはこの技術で紙幣を認識し、パソコン上で紙幣の画像を加工処理できないようエラーを出す仕組みになっています。

 

 

このように紙幣の偽造は簡単にはできないよう技術的に予防されていますし、そもそも犯罪なので絶対にやってはいけません。

しかし、紙幣が一般的になる以前にもやはり何でもない物質から貴重な金属である金を作り出せないかと人々は考えていました。

 

 

錬金術

古代エジプトでは、死後の世界があると信じられておりミイラを作る技術が発達しました。その過程で化学に対する知識も広がっていったようです。そして紀元前332年にアレクサンダー大王によりエジプトが征服されると、物質は火、土、空気、水の4つから出来ているというギリシャの化学が融合し錬金術が誕生しました。その後、8世紀になるとアラブからスペインに錬金術は伝わり、この頃には全ての金属は水銀と硫黄の配合の違いから出来ていると考えられていました。そして金以外の金属は不完全な金属と位置付けられ、完全な金属である金を賢者の石と呼んだのです。

こうして錬金術師達は金をその他の物質から生み出す方法を探し続けました。

金塊

ところが、かつて人類は金よりも貴重な金属を工場で大量生産する方法を発明したことがあるのです。

 

 

アルミニウム

アルミニウムは地球で3番目に豊富な物質で、金属では一番豊富です。地球上にある総量は鉄の2倍近いと言われています。しかし、自然界においては主に酸素と結合した状態で存在しておりアルミニウム単独の状態で見つかることはほとんどありません。また、鉄と違い純粋なアルミニウムを抽出する方法も最近までありませんでした。そのため長い間アルミニウムは金よりも貴重な金属だったのです。

例えば19世紀には、ナポレオン三世は晩餐の際に重要なゲストにはアルミのナイフ、フォーク、スプーンを用意する一方で、それよりも身分の低い者は金や銀のナイフとフォークを使ったと言われています。また、アメリカは首都にあるワシントンモニュメントのてっぺんにアルミニウムを取り付けて、高度な科学技術力の象徴としていました。

 

このように貴重な金属であったアルミニウムを大量に生産できるようになったのは1886年のこと、この年にアメリカのチャールズ・マーティン・ホールとフランスのポール・エルーが全く別々に、それぞれ 原料のアルミナに電気を通すことで純粋なアルミニウムを抽出できる事を発見します。ちなみに、アメリカとフランスでそれぞれ全く同じ時期に全く同じ発見をしたこの二人は、なんと年齢も共に22歳で同い年だったというのですから驚きです。

ホールはその2年後の1888年には、現在Alcoaという名になっている世界的アルミニウム製造会社の前身であるPittsburgh Reduction Companyを設立しアルミニウムの大量生産を開始します。これにより、当初1パウンド(約450g)あたり550ドルだったアルミニウムの値段は、99.9%値下がりして1930年代に入ると1パウンドあたりの値段はたったの20セントにまで下がってしまったのです。

こうしてかつて金よりも高価な金属だったアルミニウムの価値は暴落し、今では最も安い硬貨である一円玉の材料に使われたり遠足のお弁当で唐揚げの下にひかれるようになったのです。

アルミニウム

一度の使用で使い捨てられるようになったアルミニウム

 

 

アルミニウムがそうであったように、現代では価値のあるものも未来の社会では全く価値がなくなっているかも知れません。

未来の錬金術は人々の生活にどんな変化をもたらすのでしょうか。

 

 

 

 

Reference;

Wendover Production:https://youtu.be/1c-jBfZPVv4

Business Insider:https://youtu.be/ajm1Rgu-0x0

University of Bristol:http://www.chm.bris.ac.uk/webprojects2002/crabb/history.html

The Atlantic:https://www.theatlantic.com/technology/archive/2014/11/aluminum-was-once-one-of-the-most-expensive-metals-in-the-world/382447/

ACS:https://www.acs.org/content/acs/en/education/whatischemistry/landmarks/aluminumprocess.html

SLATE:http://www.slate.com/articles/health_and_science/elements/features/2010/blogging_the_periodic_table/aluminum_it_used_to_be_more_precious_than_gold.html

ブルーオリジン 民間宇宙旅行の時代はすぐそこ

先頃、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏を抜いて世界一の富豪となったアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏ですが、彼がアマゾン以外に手がけているもう一つの企業が民間宇宙開発企業のブルーオリジン(Blue Origin)です。

 

ブルーオリジンを一躍有名にしたのは、打ち上げたロケットを地球に戻して着陸させるという映画の中でしか見られなかった技術を世界で最初に実現させた際でしょう。

現在は、着陸させたロケットを再度打ち上げてまた着陸させるという試験を繰り返しているようで、試験の様子を公開した動画は圧巻です。

youtu.be

 

民間宇宙旅行

そんなブルーオリジンが現在目指しているのが、民間の宇宙旅行です。

アメリカ人最初の宇宙飛行士であるアラン・シェパードからとってニューシェパードと名付けられた再利用可能なロケットを使い、アポロ計画で使われたようなカプセル型の宇宙船に乗客を乗せて宇宙に打ち上げるという計画です。

 

ニューシェパードは比較的小型な15メートルほどの高さのロケットで、乗客が乗るカプセルは6人乗りになるようです。ブルーオリジンによるとアラン・シェパードがマーキュリー計画で乗った宇宙船よりも10倍広く、無重力を自由に体験できるとされます。

飛行は約11分で、ロケットで高度100kmに打ち上げられたカプセル内で乗客は3から4分間の無重力体験ができます。その間過去に宇宙船で使われたものとしては最大となる横70cmで縦は1mを超える窓から地球を見下ろすこともできます。

ロケットは自分の推力で着陸するシステムですが、カプセルの着陸は実績のあるパラシュート方式で3つのパラシュートに揺られて乗客は地球に帰還することになります。

ニューシェパード

ニューシェパードロケット By LunchboxLarry (Blue Origin Space) [CC BY 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

 

 

実はこの宇宙旅行でもう一点注目すべきなのは、飛行行程がアメリカ人最初の宇宙飛行にそっくりだという点です。

 

 

マーキュリー計画

東西冷戦時代の技術開発競争で最も大きな注目を集めていた宇宙開発で、ソ連とアメリカはどちらが先に人類を宇宙に送るかを競っていました。

ソ連は世界で初めて人工衛星を打ち上げることに成功し、歴史上初めて宇宙に行った人間もソ連のユーリ・ガガーリンでした。そして、アメリカ側では新たに発足したNASAがマーキュリー計画と呼ばれるプログラムで人類を宇宙に送る事を目指し、宇宙飛行士の選定を行っていたのです。

NASAは、軍人の中から航空機の操縦技術に優れるだけでなく体力や精神力にも優れ1500時間以上の飛行経験があるテストパイロット508人をリストアップし、メディカルチェックを行った上で最終的に7人を選出します。そして選ばれた7人の中で最初に宇宙に行ったのが、宇宙飛行士アラン・シェパードでした。

 

1961年5月5日、シェパードを宇宙に連れて行ったのはレッドストーンと呼ばれるロケットで、基本的には軍用ミサイルのてっぺんにフリーダム7と名付けられたカプセルを取り付けただけのものでした。

飛行時間は約15分。地球周回軌道に達したわけではなく、宇宙空間に到達した後に重力で地球に落ちてくるという比較的シンプルな行程です。

これが、ブルーオリジンが提供する予定の11分間の宇宙旅行とほぼ同じ行程なわけです。

アランシェパード

米国人最初の宇宙飛行士アラン・シェパード

 

 

宇宙旅行の値段

気になるこの宇宙旅行の値段ですが、今のところ発表されていません。

しかし、理屈の上では民間人に手が届く値段になることが期待されています。

基本的なアイデアは方々で語られていることですが、海外旅行する際にジャンボジェットを一回使っただけで捨てていたらとてもコストが見合いませんが、燃料を補給して機体を何度も使うことでチケットは一般人に手が届く値段になっているわけです。ロケットも捨てずに再利用できればこれと同じことができるという理屈です。再利用可能なロケットが実現すれば費用は従来の100分の1以下になるとも言われています。

 

かつては、NASAのマーキュリー計画のようにエリート中のエリートだけが行けた宇宙飛行と同じ体験を民間人でもできる日が来ようとしているのです。

 

 

さて、ブルーオリジンはアメリカ人で初めて地球周回軌道を一周したジョン・グレンからとってニューグレンと名付けられた大型ロケットの開発も発表しました。

今後もブルーオリジンから目が離せません。

 

 

Reference;

NASA:https://www.nasa.gov/mission_pages/mercury/missions/program-toc.html

The Verge:https://www.theverge.com/2017/12/12/16759934/blue-origin-new-shepard-test-flight-launch-landing

 

カスタマイズできるスマホ Project Ara モジュラーフォンはなぜ消えたか

ポケットの中に収まるコンピュータであるスマートフォン。総務省のデータによると2016年の時点で世帯保有率は70%を超えており、パソコンや固定電話と同じ水準の普及率に達しているようです。

もはや当たり前になり人々の生活になくてはならない存在になったスマホですが、パソコンのように中のパーツは変えられませんし、固定電話と違って毎年性能の上がった新モデルが発売されるため、2年おきにスマホ本体を買い換えている人も少なくありません。

アプリのようにハードウェアもあとから欲しい機能だけアップデート出来ないものでしょうか。

 

実はこの問題に取り組んだ企業がいました。

 

 

 

モジュラーフォン

いくつかの企業は、スマホの部品を取り替えられる設計を取り入れた機種を開発していました。

バッテリーの容量を増やしたい人は標準バッテリーを大容量タイプに取り替えればいいし、高画質のカメラが欲しい人はカメラを入れ替えればいいのです。

このコンセプトはそれぞれ独立して機能するモジュールでスマホが構成されているため、モジュラーフォンと呼ばれました。

モジュラーフォン

モジュラーフォンのコンセプト By Dave Hakkens (Provided by email) [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

 

代表的な例はGoogleのProject Araです。

youtu.be

 

 同じアイデアはモトローラもMotoZで、LGはG5といったモデルで展開しています。

 

しかし、今街でこれらのスマホを持っている人は見かけません。GoogleのProject Araを筆頭にモジュラーフォンが市場から消えようとしているのはなぜでしょうか。

理由が「TechAltar」で分析されています。

youtu.be

 

モジュラーフォンの利点を考えてみると以下の5つが考えられます。

1.機能拡張性

2.製品寿命延長

3.カスタマイズ

4.コスト削減

5.修理性

 

それぞれ順番に分析してみましょう。

 

 

機能拡張性

音楽を聴きたい時はスマホに高音質スピーカーをつける。カメラとして使いたい時はズームレンズを取りつける。これらシチュエーションに応じてスマホに機能拡張性をもたらす点が、モジュラーフォンを開発していた各社が一番力を入れて宣伝していたポイントでした。

しかし、そもそもモジュールがなくてもスマホの機能拡張はできます。

音楽を聴く時はブルートゥーススピーカーを使えばいいし、外付けバッテリーで長時間使用が可能になります。

また360度カメラなど特殊な機能は、そもそもスマホの一部である必要性があまりありません。それらはUSBやブルートゥースでつながる製品なら、モジュラーフォン以外にもつなげられる上に価格はモジュラーフォン専用品と変わらないのです。

 

製品寿命

デスクトップパソコンと同じように、構成部品を取り替えられるのはいいアイデアのように思えます。しかし、スマホではコンパクトである必要があるために、コア機能のCPUやメインボードは取り替えられません。

よって根本的には製品寿命も延びません。

 

カスタマイズ

これについては歴史が何度も証明しているように、ほとんどの消費者はカスタマイズ性など気にしていないのです。むしろ人々は他人と同じものを欲しがっていますし、大抵の人はパソコンの壁紙ですら初期設定から変えもしないのです。

実際、モジュラーフォン以外にも過去にカラーリングなどのカスタマイズはいくつかの企業によって試されましたが、成功していません。

カスタマイゼーションはあくまでニッチな存在なのです。

 

コスト削減

スマホを構成する部品に標準品というものが使えればコストが削減できる可能性があります。しかし、モジュラーフォンは構造上、モジュールに追加のコネクタやスライド機構や磁石が必要になるので、むしろコストは上がる方向になってしまいます。

 

修理性

他の点より、説得力があります。画面が割れたら取り替えればいい、バッテリーが弱ったら取り替えればいい。魅力的ではないでしょうか。

しかし、GoogleもMotorolaもLGもモジュラーフォンでこの点にはそれほどフォーカスしていませんでした。

 

 

ということで、一般人がモジュラーフォンを欲しがる理由は見当たりません。ごちゃごちゃして分厚く値段も高い上に、大した利点はないからです。人々が欲しがるのは洗練されたデザインや高級な素材のスマートフォンなのです。

 

GoogleでProject Araの設計責任者だったRafa Camargo氏も、以下のように述べています。

「市場調査の結果、ユーザーはすべての機能が最初から付いていて、いつでも機能することを望んでいるという事が分かった。」

 

GoogleがProject Araを終了させたのは、当然と言えるでしょう。

 

 

供給者の視点

企業側の視点に立って見ても、業界の流れを変えられるようなメジャープレイヤーであるアップルやサムスンにモジュラーフォンを導入する利点は見当たりません。数千円のモジュールが売れるより、2年に一度10万円するスマートフォンを買い換えてくれる方がずっといいです。

逆に挑戦者であるモトローラやLGは、サードパーティの巻き込みが十分できずに、モジュラーフォンはプラットフォームとして自立するに至りませんでした。

 

 

 

モジュラーフォンの失敗はかつて海外で日本のオーディオ機器を皮肉ったレビューがされていたのを思い出させます。

日本のオーディオ機器には、やたらと青色LEDや小さいつまみやボタンが並んでいるが、2ヶ月かけてそれらをすべて調整した結果、結局ヨーロッパ製のオーディオ機器と同じ音質になる、という内容です。

 

つまり、ほとんどの消費者にとって細かい設定やカスタマイズは、嬉しい追加機能というよりは煩わしい存在なだけで、自分で調整などしなくてもすぐに使える状態で売って欲しいわけです。

 

 

モジュラーフォンはスマホの世界に革命を起こす事はできませんでした。もうしばらくは、アップルとサムスンが世界のスマホ市場での勝ち組という構図が続きそうです。

 

 

 

Reference;

総務省:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc262110.html

 

原発の過去と未来はスターウォーズと全く同じストーリー展開である

原子力発電を続けるのかやめるのか。日本にとって大きなテーマですが、原子力の歴史を調べてみるとなんと過去から未来への出来事が、映画「スターウォーズ」のストーリーと完全に一致していることがわかります。

 

ここでは、原子力発電の歴史とスターウォーズのストーリーが持つ共通点を見てみます。

 

 

原爆の発明

原子力発電を語る上で切り離せないのは、原子爆弾の存在でしょう。

時は第二次世界大戦中の1939年。ドイツの科学者たちが核分裂の仕組みを解明したとの情報から、すぐにナチスがこの技術を兵器として使う可能性が指摘され始めます。

ドイツからアメリカに亡命していたアルバート・アインシュタインやイタリアから亡命していたエンリコ・フェルミなどの著名な物理学者は、ワシントンにこの状況の危険性を伝えますが当初の反応はイマイチでした。それでも最終的にルーズベルト大統領は、1941年にはアメリカの原爆開発計画「マンハッタンプロジェクト」を開始します。

そして1942年の末、ワシントンを説得したエンリコ・フェルミ自身が核分裂の制御に成功して原爆がいよいよ実現可能なものとなったため、アメリカはニューメキシコ州のロスアラモスに原爆の製造基地を建設。ロバート・オッペンハイマー博士を責任者にします。

その後1945年7月16日。ニューメキシコ州のトリニティ実験場で世界初の原爆実験は成功し、ここに原子爆弾が完成するのでした。

トリニティ実験場

砂漠にあるトリニティ実験場の衛星写真

 

 

兵器から平和利用へ

第二次世界大戦が終わると、原爆と核分裂の制御技術は発電に使うことが検討されます。

原爆の威力を知った世界の人々は、この技術が発電に使われれば最終的に電気は無料になり、工場や家、車などはすべて原子力でエネルギーを賄うようになると考えたのです。しかも、二酸化炭素を排出しません。まさに夢の技術です。

ところがすぐに原子力発電は技術的なハードルが高いことが分かり、結局民間の企業は石炭や石油、ガスを使った発電にとどまり続けます。原発最初期の1950年代には建設が始まった発電所のうち半分しか完成させられませんでした。

それでも、石油や石炭などエネルギーの輸入からなんとか解放されたい国々は原子力発電の可能性を信じ、また一部の国は核兵器の開発という目標と合わせて原子力発電の研究は続けられます。

 

その後、原発が一気に世界に広がったのは1970年代初頭にオイルショックが起こり石油価格が高騰したためでした。実際に現在世界にある原発の半分以上はこの1970年から1985年までに建設されているのです。

この頃作られた原発は軽水炉(Light Water Reactor)と呼ばれるタイプのものです。科学者たちにはあまり人気がない技術的にはかなり単純なものでしたが、このタイプの原発はこの頃にはすでに技術的に確立されていたため、軽水炉が選ばれるのは必然でした。

軽水炉

軽水炉

 

仕組みは単純で、核分裂により水を温めてできた蒸気でタービンを回して電気を作るというものです。原子力発電で最もよく使われるのはウラン235という物質の核分裂で、ウラン235に中性子を当てるとクリプトン92とバリウム141に分裂し大量の熱と中性子を放出します。その中性子がまた別のウラン235を核分裂させるというのを繰り返して熱を取り出す仕組みです。発生するエネルギーは凄まじく、えんぴつの反対側についている小さな消しゴムほどの大きさの核燃料が、貨物列車1両分の石炭と同じエネルギーを持っています。

 

ただし軽水炉は、考えられる原子力発電の仕組みの中でも決して効率がいいわけではなく、何より最も安全な方式とは言えませんでした。

 

 

<スターウォーズ>

このように原子力発電の発明は、アメリカが原爆実験を行ったニューメキシコ州の砂漠を起源としているわけですが、スターウォーズの始まりもニューメキシコの砂漠にそっくりな砂の惑星タトゥイーンです。

「スターウォーズ エミソード1」では、ジェダイマスターのクワイ・ガン・ジンが強大なフォースを備えたアナキン・スカイウォーカーを砂漠の街で発見します。将来フォースにバランスをもたらすとされたアナキンですが、同時にジェダイマスターのヨーダはアナキンを訓練することに危険性も感じていました。

まさに原子力発電の誕生とスターウォーズの始まりは、ほとんど同じ展開と言っていいでしょう。

 

 

 

夢のエネルギーが抱える矛盾

軽水炉の実用化により夢のエネルギー時代の幕開けに思えた原子力発電ですが、すぐに問題が発生します。

可能性が考えられる事故の中でも最悪な類のものが次々起きたのです。当初原発は何重にも安全装置があるから事故は絶対に起こらないとされていましたが、絶対などなかったのです。

 

 

アメリカのスリーマイル島原発での事故

1979年3月28日。冷却水を原子炉に供給するポンプが故障したため原子炉内の水圧と温度が上昇したところから事故は始まります。すぐに安全バルブが開き冷却水が外に流れ出し原子炉内の水圧が調整されました。ここまでは設計通りです。

ところが、水圧が正常に戻ったにもかかわらず、原発運転員が気付かないままバルブは開いた状態で2時間以上も放置されてしまいました。そのため、必要以上の冷却水が外に逃げてしまい原子炉内は冷却水不足となります。

さらに、制御室のコントロールパネルには安全バルブが閉じて必要以上の冷却水が注入されているとの表示がなされたためポンプが停止され、冷却水を失った原子炉内で核燃料の温度が上昇。最終的にメルトダウンが発生します。

その後冷却水が戻され間一髪で最悪の事態は回避されますが、少量の放射性物質が大気中に放出される結果となりました。

 

 

ソ連のウクライナにあったチェルノブイリ原発

1986年4月26日。定期検査に先立ってある試験が行われました。メイン電源が落ちた後に余力でタービンがどれくらい回る続けるかの確認試験です。それにより緊急用のディーゼル電源が作動する前に、冷却水供給ポンプをどれくらい長く動かせるか確認するためでした。

しかし、試験に入る前の原子炉の出力を絞る作業でミスをして出力が予定よりも大幅に低くなってしまったため、再度出力を上げるのにほとんどの制御棒が抜かれることとなります。

この状態で実験開始。ポンプが減速し始めて冷却水の供給が減ると原子炉の出力が急上昇します。すべての制御棒が挿入されますが、この原発の設計上制御棒の挿入は一度出力を上昇させてしまうという特徴があったため、出力はさらに上昇し原子炉は爆発してしまい原子力発電所の建物が破壊されます。

これにより、放射性物質がロシアからヨーロッパ諸国にかけて大量放出される事態となりました。

 

 

核兵器への流用

もともと国連の常任理事国である5カ国、ロシア、中国、アメリカ、イギリス、フランスが、核兵器の保有を公式に許されていました。ところが現在これらの国以外も、核兵器の開発を成功させたか極秘に保有しているとされます。インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル、イランです。

これらの国も多くは、最初は原発を建設するところから原子力の技術を入手しています。

問題は原発で発電を行った後に出る核のゴミと言われる放射性廃棄物で、現在この核のゴミは地中深くに置いて無害化するまでの10万年間管理するか、核兵器に転用するしか使い道がありません。

 

 

<スターウォーズ>

将来を嘱望された原子力発電でしたが、事故や兵器への流用など持てるポテンシャルは人類を不幸にする側に働き始めました。

これはまさに「スターウォーズ エピソード2とエピソード3」で起こったことと同じです。アナキン・スカイウォーカーは、強大なフォースを制御しきれずにフォースの暗黒面にとりつかれてしまいジェダイの騎士たちを殺してしまうのです。そしてジェダイの騎士になるはずだったアナキンはシスの暗黒卿ダースベイダーとなり銀河は暗黒の時代に突入します。

夢のエネルギーと思われた原子力が一瞬で地球を滅ぼしかねない存在となったのは、スターウォーズにおけるダースベイダーの誕生と全く同じ展開です。

 

 

 

 

原子力発電の未来

原子力発電はピーク時に世界のエネルギーの18%を供給していましたが、今では10%程度にまで低下しています。老朽化した原発が廃炉されたり、ドイツのようにすべての原発を既に停止して原子力発電を行わないことを決めた国も出てきました。

しかし、原子力発電に将来がないとは言い切れません。

原子力発電には従来の核分裂を利用したものの他に核融合という現象を利用する方法も考えられます。

 

核融合は核分裂とは反対に物質と物質が衝突して一つの物質になる際に膨大なエネルギーを放出する現象で、核分裂よりも10倍多くのエネルギーを取り出せると考えられています。

ただし現在の技術では、核融合を起こすために必要な超高温の環境を作り出すのに膨大なエネルギーが必要なため、核融合を起こすのに必要なエネルギーの方が核融合で得られるエネルギーよりも多くなってしまうという問題があります。

現状を鑑みると核融合発電所が出来るまでにはあと数十年が必要でしょう。

 

そんな現段階では技術的に未熟な核融合発電に対する解決策が、太陽です。

太陽

地球には膨大なエネルギーが太陽から降り注いでいますが、その太陽のエネルギー源こそ核融合なのです。そして、人類はすでに核融合によって生まれた太陽から降り注ぐエネルギーを電気に変換する技術を持っています。ソーラーパネルです。

つまり見方によっては、ソーラー発電は核融合発電の一種と取れなくもありません。

 

 

 

<スターウォーズ>

スターウォーズでは、ダースベイダーの力によって帝国に支配された銀河の片隅で「エピソード4」から「エピソード5」にかけて新たなる希望が示されます。アナキン・スカイウォーカーの子、ルーク・スカイウォーカーです。

成長したルークは、オビワン・ケノービからジェダイの訓練を積むよう進言され、沼の惑星ダゴバでヨーダから訓練を受けます。そして、ダースベーダーに対抗できるジェダイの騎士が誕生するのです。

まさに、核分裂による発電が世界に暗い影を落とした後にソーラー発電という希望が現れたのと全く同じ展開です。

 

 

 

結末

では、原子力発電とソーラー発電は今後どうなっていくのでしょうか。

 

旧スターウォーズのクライマックスとなる「エピソード6」では、皇帝とダースベイダーが強力なジェダイの騎士となったルークに対して心理戦を仕掛けてダークサイドに入るように仕向けます。それを拒否したルークは皇帝によって抹殺されそうになりますが、ギリギリのところでダースベイダーは善の心を取り戻しジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーとして皇帝を倒して力尽きるのです。

 

つまり、今後世界の原発は全て廃止されて核兵器も無くなり、世界はソーラー発電にシフトするという事が暗示されているのです。果たして今後もこのままスターウォーズのストーリー通りに物事が進むのでしょうか。 

 

 

 

ちなみにスターウォーズは、銀河に平和が訪れた後の話が「エピソード7、8、9」として製作されています。

映画も世界のエネルギー問題のゆくへも、共にどんな結末になるのか注目です。

 

 

 

Reference;

PBS digital:https://youtu.be/6lbjxk1Lexs

vox:https://youtu.be/poPLSgbSO6k

In a Nutshell:https://youtu.be/rcOFV4y5z8c

U.S. History:http://www.ushistory.org/us/51f.asp

NEI:https://www.nei.org/Master-Document-Folder/Backgrounders/Fact-Sheets/The-TMI-2-Accident-Its-Impact-Its-Lessons

World Nuclear Association:http://www.world-nuclear.org/information-library/safety-and-security/safety-of-plants/appendices/chernobyl-accident-appendix-1-sequence-of-events.aspx 

 

 

 

お年寄りはなぜ身長が低いのか

現在4人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えている日本ですが、街で見かける高齢者は大抵の場合若い世代の人よりも背が低いです。

なぜおじいちゃんとおばあちゃんは背が低いのでしょうか。

 

 

歳を取ると背が縮む

多くの人が聞いたことのある話は、歳を取ると背が縮むというものです。

これは実際に起こることで、ヒザの関節軟骨がすり減ったり、骨が細くなる(長さも短くなる)、筋肉が衰えるといった原因により、40歳を過ぎた頃から人は10年に1cmほどのペースで身長が縮んでいきます。

つまり80歳になる頃には40歳の時よりも、4から5cmほど背が低くなってしまうというわけです。

膝

 

 

しかしここで疑問に思うのは、街で見かけるおじいちゃんやおばあちゃんは周りより4cmどころではなくもっと背が低いではないかということです。

 

 

 

本来伸びるはずだった身長に達していない

お年寄りの背が低いもう一つの理由が、そもそも若い頃に本来伸びるはずだった身長にまで背が伸びなかったということが挙げられます。

 

例えば、現代では食べ物が多すぎて食べ過ぎによる肥満や食べ残して捨てる量が膨大であるといったことが社会問題となっていますが、歴史的にはつい最近まで食べ物は足りないことの方が普通でした。身長が伸びる成長期に食料が足りないということが普通だったため、十分な栄養を摂取できずに身長の伸びが抑えられてしまったのです。

他には、幼少期に病気にかかることが現代よりもはるかに多かったことも挙げられます。現代なら簡単に治る病気でも長く患ってその間栄養の摂取が十分に行えないということも珍しくなかったのです。

また、医学的に子供の成長に必要な栄養素についても現代ほど研究が進んでいませんでした。そのため、どんな栄養素を摂取するのが子供の成長にとって理想的なのかわかっていなかったのです。現代のようにお母さんのお腹の中にいるときからサプリメントで不足しがちな栄養を補うなどということは出来なかったのです。

 

こうした複合的な要因により、おじいちゃんとおばあちゃんの世代は、本来伸びるはずだった身長のポテンシャルを発揮できずに成長期を終えたのです。

子供お年寄り

 

背の低いおじいちゃんおばあちゃんは消える

では、上で述べたような問題を抱えていない現代人はどうでしょうか。

どうやら一部の国では人々の身長はポテンシャルの限界に達したようです。

近年食料問題が解決して医療や栄養学が発達するとともに、人々の平均身長はどんどん伸びました。例えばNCD Risk Factor Collaborationの調査によると世界で最も平均身長が伸びたのは韓国人の女性で、なんと1896年から1996年の100年で平均身長が20.2cmも伸びているのです。

しかし、このまま身長が2m, 3mと伸びていくわけではなくポテンシャルをフルに発揮できるようになって以降の世代の人たちはもはや背が伸びなくなりました。日本人で言えば、1960年代前半以降に生まれた人から後の世代はほとんど平均身長が変わっていません。

同じことが世界の先進国で確認されており、医療にしろ栄養にしろ身長の伸びを邪魔する要素は現代ではほとんど解決したのです。

 

つまり日本を含めて人々の平均身長の伸びが止まったような国では、近いうちに背の高いおじいちゃんとおばあちゃんを街でたくさん見かけるようになる日がやって来るのです。

 

 

 

 

Reference;

MinuteEarth:https://youtu.be/VQTyRVBkeIw

eLIFE:https://elifesciences.org/articles/13410

 

自動運転で最も遅れるテスラと進んでいる意外な企業

テクノロジーの世界で今一番多く語られる話題の一つが自動運転でしょう。

自動車メーカーだけでなくIT企業も参戦していることから技術開発競争が激化している分野です。

中でもアメリカの電気自動車ベンチャーのテスラは、「オートパイロット」と呼ばれるドライバーアシスタント機能をすでにリリースしており、高速道路など一定の条件下ではほぼ車が自分で安全を保ちながら走行を続けることが可能になっています。今、自動運転の領域で最も進んでいる企業の一つとして捉えられることが多いでしょう。

すテスラモデルS

テスラ モデルS By Andrzej Otrębski (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

 

ところが、アメリカの技術調査会社であるナビガントリサーチ(Navigant Research)が2018年1月に発表したレポートによると、対象となった自動運転技術を開発している企業19社のうち意外なことにテスラは最下位にランキングされています。

 

レポートによれば、テスラのイーロン・マスクCEOが派手な発表を繰り返していくら世間の気を引こうとも技術的には疑わしい水準であるとされています。また資金面や製造品質に問題があることも評価を下げた原因でした。

前述の「オートパイロット」も自動運転のレベル2と言われる水準の技術で2015年の登場以来目立った進歩は見せていません。

 

 

逆にレポートで1位となったのはリーマンショック後の破産から復活したアメリカのゼネラルモーターズ(GM)です。

GMは、同社の電気自動車であるシボレーBolt EVをベースにハンドルもアクセルもブレーキペダルもない車を完全自動運転車として2019年に投入することを発表しています。

また、ライドシェアのリフト(Lyft)への出資に自動運転ベンチャーのクルーズオートメーション(Cruise Automation)の買収やメイヴン(Maven)というカーシェアリング事業を立ち上げており、会社として他社をリードするだけの知識・ノウハウを持ち合わせている点が高評価の理由でした。

もちろん、世界最大級の自動車会社として自動運転技術に巨額の投資ができるだけの収入もあります。

シボレーボルト

GMの自動運転車 By Dllu (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

そしてここで気になるのは日本企業です。

同レポートでは1位のGMの他に、2位はグーグルの自動運転プロジェクトが独立したWaymo、3位がメルセデス・ベンツブランドを抱えるダイムラー社と世界最大の自動車部品会社ボッシュ社の連合、そして4位フォードが先頭集団とされており、この中に日本企業はありません。

このランキングでは、ルノー日産アライアンスが8位、トヨタが12位、ホンダが16位とアメリカやドイツ勢に対して日本勢の出遅れが明らかになっています。

 

日本企業の遅れの最大の原因は、上位陣が自動運転という技術で何を目指しているのかを調べると見えてきます。

GMは前述の通り、ライドシェアやカーシェアなど自動車を造って儲ける以外の事業に目を向けています。ウェイモもグーグル時代から自動運転のベース車両はレクサスを使っており、開発していたのはあくまで車というハードではなく自動運転の技術そのものでした。今もクライスラーのバンをベースに自動運転車を開発しており、車を作って売るのではなく移動を消費者に提供することが目標になっています。3位のダイムラーも同様で、既に同社のカーシェアサービスであるCar2Goは世界最大の規模にまで成長しており、ユーザー同士が直接車を貸し借りするピアトゥピアシェアリングも開始予定です。

つまり、従来自動車産業を支配していたのはカーメーカー(車を創る会社)だったわけですが、それが今後はモビリティープロバイダー(移動を提供する会社)に変わろうとしている様子が見て取れるのです。

ウェイモ

クライスラーパシフィカを改造したウェイモの自動運転車 By Dllu (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

 自動運転技術とは、車のハンドルやアクセル操作が自動になるという話では終わりません。実際には車の使い方や人々が移動する方法そのものが根本的に変わり、自動車業界の勢力図も塗り替えられようとしています。

スマートフォンのアップル、インターネット検索のグーグル、ネットショッピングのアマゾンのような黒船が日本のマーケットに参入した後の日本企業は苦戦しています。まだ決着がつく前に日本からも欧米に対抗できるモビリティープロバイダーが現れることを願うばかりです。

 

 

 

 

Reference;

Navigant Reserch:https://www.navigantresearch.com/research/navigant-research-leaderboard-automated-driving-vehicles

Car and Driver:https://blog.caranddriver.com/analysis-theres-a-new-leader-in-the-race-to-develop-self-driving-systems/